頼むから、自分の声、ちゃんと聞こえるようにしてください
歌う時は、いつだって、きちんと細部のニュアンスまで自分の歌が聞こえてくる環境で歌いたい。
ヴォーカリストなら誰だって思うことです。
骨伝導で聞こえてくる音には限界があります。
やっぱり、カラダから出た声をちゃんと耳で拾って、出音を確認しながら、表現に微調整を加えたい。
そんなんで、歌の現場ではいつも、「自分の声難聴なんで」と前置きをした上で、ヴォーカルのオンリーをください、もっとモニターから自分の声が聞こえるようにしてくださいと、時間をかけて調整してもらっています。
しかし、です。
この、肝心の自分の声。いつもいつも、思ったように聞こえるとは限りません。
レコーディングの現場でも機材の調整がイマイチだったり、エンジニアさんとの相性が悪かったりすると、いつまで経っても「YES感」のある声が聞こえてこない。
ライブの現場、特に爆音系の現場では、楽器の音の壁にはばまれたり、会場のキャパや機材のパワーの問題もあったりして、PAさんがどんなにがんばってくれても、うんざりするほど聞こえないなんてことは、日常茶飯事です。
やっとそこそこ気持ちよく歌える音量にしてもらうと、今度はバンドのメンバーから、「俺のモニターからヴォーカル切ってください」なんて声が相次ぎます。
「え〜!?あたしの歌聞いてよ〜!」と叫ぶと、「聞こえてるんだよ!」とみんなが口をそろえて言い出す始末。
それで、みんなのモニターから私の声が消されると、また自分の声が聞こえにくくなったりします。
いや、声量の問題とか、そういうことではありません。
かつては、PA界のレジェンドに、「MISUMIさんの声はドラムの音圧に匹敵する」と言われたことだってあるし、Marshallの元社員さんから、「ノドにMarshall入ってる」などと言われたこともある。
つまり、控えめに言っても、私の声はデカいわけです。
でもね。
デカい音のする楽器だろうがなんだろうが、耳栓して演奏できますか?
むしろ、ダイナミクスの広い楽器だからこそ、細部までくっきりモニタリングをして、ダイナミックかつ、繊細に演奏したい。
自分の声が聞きづらいと、無意識に、「自分に聞こえやすい音量」で歌ってしまいます。
つまり、必要以上にがなったり、大声で歌ったりしてしまう。
私は、こんな時の自分の声が大っ嫌い。
パフォーマンスも乱暴で、我が歌ながら、耳を覆いたくなります。
パフォーマンスは一期一会。
どんな状況で歌っても、オーディエンスは、その刹那に聞いた私の声を、「私の声」として認識します。
言い訳は無用。その瞬間の出音がすべて。
だから、いつだって、自分の声がちゃんと聞こえるように、繊細なパフォーマンスができるように、全力で準備するわけです。
こんな話をすると、近年はもう、必ずと言っていいほど、「イアモニつかえば?」と言われます。
正直、イアモニが主流になってきた、ここ10〜15年ほどは、極端にライブの本数が少なかったこと、ツアー系のお仕事などもしてこなかったことで、イアモニの導入は考えたこともありませんでした。
けど、蚊の鳴くような声で歌うアイドル系シンガーたちの声が、しっかりとアリーナに響き渡っているのを聞くと、あぁ、テクノロジーって素晴らしいなと感動するし、いつまでも昔ながらのやり方で苦しんでないで、そろそろ新しいチャレンジしどきじゃない?なんて思ったり。
一方で、会場の反応の聞こえ方やら、耳の健康やら、エンジニアさんとの相性やら、いろいろ気になったり。
まぁ、そろそろ一度、チャレンジしてみましょうかね。。。
来週もライブです。
老舗JIROKICHI。
きっと、しっかり聞こえるはず。届くはず。
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