大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「レコーディングセッション」という真剣勝負。

      2024/07/19

お仕事日記です。

トレーナーを志したその時から、自分自身がどんなプロセスで上達してきたのかを振り返りながら、メソッドを組み立ててきました。

完コピもやった。バンドもやった。レッスンだって受けた。
でも、私自身の歌のパフォーマンスが劇的に向上したのは、プロの現場、特にスタジオでお仕事をさせてもらうようになってからです。

「初めまして」で、はじまる現場の緊張感。
プロとしてのアチチュードも、マイクの前に立って最初に発する声のクオリティも、フレーズのひとつひとつ、いや、奏でるメロディの一音一音も、すべてが「品定め」の対象で…。
つまりね、毎回毎回、一瞬一瞬がオーディションなんです。

そんな、一期一会の世界で、きちんと結果を出せるか。
通り一遍歌えるというレベルではなく、その場に居合わせた人みんなを感動させられるか。
自分のファンにすることができるか。
次に繫がるパフォーマンスができるか。

そんな現場を疑似体験し、集中力や瞬発力、対応力を鍛えてもらおうと、レコーディング体験セッションというプログラムをスタートしたのは2019年のこと。

まずはMTL修了生限定でお知らせしたところ、あっという間に予約が埋まって行きました。
受講した人たちからは、その学びの多さに次々と感動の声が届き、「この体験こそが、成長を続けるヴォーカリストたちにとって、究極の学びの場になるのだ」と、確信したのも束の間。
にっくきコロナがやってきて、なにもかもが中止。
せっかくいただいていたご予約も、すべてキャンセルを余儀なくされました。

そんな、幻の講座が、今日、いきなり復活しました。
発端は、長年の生徒さんから、「プレゼン用のヴォイスサンプルをつくりたい」と依頼されたこと。
ヴォイスサンプルというのは、声や歌のオーディション用の資料のことです。
そのデモを聞いて、ディレクターやクライアントが気に入ったら、お仕事に直結するというもの。
かつてのCMの女王(自分で言うな!)としても、めちゃくちゃ気合いの入る案件でございました。

流れはこんな感じ。

1. 事前にカラオケで歌ったデモを送ってもらう。
2. 歌詞カードなどにチェックを入れて、フィードバック。アドバイスなどをメッセージで送る。
3. 当日、スタジオで、マイクとの距離や、ヘッドフォンの中の音のつくり方などをアドバイス。
4. 大槻啓之氏のディレクションによるレコーディングタイム。
5. ある程度録って、雰囲気がつかめないところは、一緒にブースに入って、実際に私が歌っているようすなどを感じ取ってもらった後、歌い直す。
6. 大槻啓之氏によるデータ整理。簡易ミックスダウン。

今回、久しぶりということもあり、新しい試みもありましたが、本人も、私たちも、この流れは非常に大きな手応えを感じました。
彼女の歌もとっても魅力的でした。

私たちもずっと真剣勝負。
この数時間で学べる情報量は、ものすごいものがあります。
歌の仕上がりが楽しみ。

うん。なんか、今日もいい仕事した感満載です。

 - MISUMIの日記&メッセージ, ある日のレッスンから, デモをつくろう!, プロへの突破口

  関連記事

そのオリジナル曲、イケてる?イケてない?

オリジナル曲を人に聞いてもらうときには、 曲自体のクオリティ、構成などはもちろん …

年齢を公表するか、否か問題

むか〜し、 一緒にツアーを回っていたダンサーの子とおしゃべりするうちに、実は彼女 …

デモをつくれ!

「音楽の世界で認められたいなら、 とにもかくにもデモをつくれ」と、 音楽学校でも …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …

カバー曲の歌唱にオリジナリティをプラスする3つの方法

「オリジナリティ」と「クセ」は紙一重です。   「オリジナリティあふれ …

「自分の音域を知らない」なんて、意味わからないわけです。

プロのヴォーカリストというのに、 「音域はどこからどこまで?」 という質問に答え …

デモをつくろう!

  学生たちの夏休みの宿題に、 「好きな曲、1曲、完璧に歌って、録音し …

「自分が嫌い」の爆発的エネルギー

思うように行かないことは、いつだってあります。 自分が望むような方向に人生が流れ …

ちゃんと「聴く」!

さて、音源を買ったら、次にすることは当然「聴く」。   この「聴く」が …

音楽が人と人とを繋ぐのだ

コロナ(COVID-19)に翻弄されていた3年間は、時間の感覚が分断され、人と人 …