大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

退化か?最適化か?顔筋がなくなる日。

      2024/11/05

この秋から、新たに、新人グループの育成を担当しています。
高校生から20代前半の超若手女子たちが、これまた若手のスタッフさんたちと一緒に次々とプライベートレッスンにやってくる日々。

トレーナーをはじめてから、こうした新人育成は幾度となくやらせてもらっているわけですが、
当たり前のことだけど、だんだん「新人」たちとの年齢差は開いておりまして。

文化が違うのは当然のこととして、ここへ来て、どうやら人間としてのカラダの在り方まで違ってきていることを発見し、愕然としております。

 

まずね、おへその位置が高い。

私のレッスンでは必ず、「おへそどこ?」という質問をするんです。

呼吸で大事な筋肉を意識してもらうためなんですが、そのたびに、「え?そこ?ほんと?それ胃じゃないの?」っていう位置におへそがある。
まぁ、もちろん、選び抜かれた子たちなんで、スタイルがいいのは当たり前なんだけど、それにしても、びっくりする「へそ高」です。

そして、示しあわせたかのように姿勢が悪い。
「姿勢がいい」って、努力して型をつくるようなものではなくって、本来あるべきカタチに骨を置いてあげるってイメージなんですが、この「本来」が、違って来ているのか?
私たちの世代では見たことのない形状でカラダをつかっています。

とどめは顔の筋肉のなさです。
この世代、10代の大半をマスクとともに過ごしている。
だからね、「顔がマスク」。
頬まわりの筋肉がびっくりするくらいない。
口角が上がらない。
なんだか、表情が乏しい。

最近、「涙袋」ってのを顔に描いたり、唇を分厚くするためにヒアルロン酸を注射したりするのが流行っていると聞いて、なんで〜?と思ってたわけですが、なるほど、顔に筋肉がないから、立体的にするためにお絵かきするようなんです。

確かに、椅子の生活が標準になって、畳に座ったり、床に這いつくばったりすることがなくなれば、足は長くなるかもしれないし、PCやスマホにカラダが順応するならば、肩も首も前に出ていた方が作業効率はよいかもしれない。
そもそも、声をつかってコミュニケーション取る時間が圧倒的に減っているわけで、それなら無駄に顔の筋肉なんかない方が、エネルギー効率はいい。

こんな若者を見るたびに「筋肉が退化してる!」と言ってきたわけなんだけど、
もしかして、これは人類の最適化なのかしらん?

長年、講演でもワークショップでも、「私たちのカラダはもう何万年も進化していません」と冒頭で言い放つのが私のスタイルだったんですが、ちょっと見直さなくちゃいけないかもしれません。


明日以降発行予定のメルマガでは声と顔のビューティーアップに鍛えるべき顔筋のお話をしましょう。ご購読はこちらから。もちろん、無料。バックナンバーも読めます。
ご登録いただいた方には、『朝から気持ちい声を出すためのモーニングルーティン10』をプレゼントしています。

 - カラダとノドのお話, 声のはなし

  関連記事

声の温度。歌の肌触り。音の匂い。

ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …

自分というエネルギーを全身全霊で表現するのだ。

声はエネルギー。 だから、自分という人間のエネルギーを全身全霊声にして、 聞く人 …

飲み会で声を枯らさないための3つの知恵

感染者数はまだまだ多いとはいえ、 だんだんとコロナとの付き合い方に慣れて来た感の …

no image
「ひとりごと」のススメ

「最近、どうも声が出づらいんです」 「すぐ声が枯れるようになった気がします」 「 …

no image
「声」は映画のBGMと似ている

他人の話を聞いているときに「声」に意識を奪われるなんて、 話し手の声がよほどユニ …

「軸の弱さ」をなんとかする。~Singer’s Tips #13~

高い声を出すとき、どうしても上を向いてしまう。 大きな声を出す時は、なぜかクビが …

「できないこと」ではなく、 「今できること」に意識を向ける

うまく行かないときに、 うまく行かないところにばかりフォーカスすると、 本来でき …

声の変化と向き合う vol.2〜変化を受け入れ、味わい、楽しんだものが勝ち

「声の老化」についての第2回です。   第1回は、年齢を免罪符にせず、 …

no image
声の老化は隠せない

「うっそぉ〜〜。ほんとにぃ〜〜?」 30年以上も前でしょうか? 女子中高校生たち …

「自分の声になんか興味ない」?

ずいぶん前、著者仲間と本の企画について話していたときのことです。   …