「人前で歌うとき」の理想的な状態
人前で歌うとき、パフォーマンスするときに、
重要だと考えていることは3つあります。
ひとつめは「自由であること」。
その瞬間、瞬間の想いや、
感情、心の動きを、
思い通りの声で、音で、
過不足なく、十二分に表現できる状態。
気持ちよく声が出ないとか、
高い音が届かないとか、
低い声が鳴らないとか、
メロディが歌えずに躓くとか、
舌が思うように回らないとか、
リズムがずっこけるとか・・・、
そういう不快なことが何にもない状態です。
日々体調管理に心を砕いて、
準備や練習をどれだけ周到に積み上げても、
本番の最中に「完璧に自由である」と感じられることは、
一生のうち、そう何度もあることではないでしょう。
しかし、この、理想の状態を追いかけて、
誰もが修行に励むわけですね。
2つめは、「集中していること」。
パフォーマンスの敵は思考のノイズ=雑念です。
いま、この瞬間、全身で自分自身を表現したいとき、
自分自身の感情の流れを阻むものは、
全てノイズとなって、エネルギーを衰えさせます。
反対に集中力が高まれば、
普段出せない力が出て、
自分自身が驚くときさえあります。
集中の条件は、じつにさまざま。
自分自身のパフォーマンスに不安な要素がないこと。
なにも考えなくても、間違えずに完璧にこなせること。
などの、自分自身の問題はもちろん、
モニターが好みの音、心地よい音量で返ってくる、
ステージ上に障害物が少なく、
自由に動き(暴れ?)回れるスペースがある、
客席に集中を妨げる余計な動きがない、
などの外的要因もあります。
意外と盲点なのが衣装関係。
靴とステージの床の相性が悪いと、
滑りすぎて転びそうになったり、
反対に滑らなすぎて踊りにくかったり。
そういえば、ヒールが山台のスキマに引っかかって、
靴が脱げてしまったことがありました。
ブレスレットが衣装に引っかかってしまったり、
イヤリングがすっ飛んで行ってしまったり、
肩のストラップがするする落ちたり・・・。
そうそう、ストラップレスのブラが落っこちちゃって、
お腹のあたりにたまっちゃった、なんてこともありました。
(こらこら、どんだけ暴れるんだ)
全てが集中力を妨げる要因になることばかり。
集中力を妨げる要因を排除することも大切ですが、
何より大事なのは、
ちょっとしたことで動じないメンタル。
集中力の強化でしょうか。
3つめは「コミュニケーションが取れていること」。
音楽はひとりきりでは成立しません。
一緒に演奏する仲間がいる。
聞いてくれるオーディエンスがいる。
サポートしてくれるスタッフがいる。
関わりあうすべての人が、音楽を通じて、
互いの呼吸、エネルギー、心の動きを感じあい、
互いを高め合う。
それこそが音楽のチカラ。
音楽とは、究極のコミュニケーションなのです。
ライブ経験、パフォーマンス経験を重ねるほどに、
こうした理想の条件を満たすための、
自分なりのセオリーをたくさん持つようになります。
完璧な理想の状態が得られなくても、
どこかで自分なりにバランスを取って、
最終的には、一定レベルのパフォーマンスに、
持っていくこともできるようになります。
バランスがうまく取れるようになり、
パフォーマンスの平均点が上がることは、
プロとしての安定感に繋がるのですが、
ここには危険もあります。
平均点で満足してしまうのです。
予定調和を繰り返すことで、
ある程度の評価が得られるようになると、
バランスを崩したくないがために、
冒険したり、挑戦したりをしなくなります。
努力するのが面倒になることも多々あります。
「こんなもんか」で満足すれば、精度はじり貧。
鮮度は気づかぬうちにどんどん落ちていく。
そうなったら、パフォーマンスは、
どんどん負のスパイラルに入ってしまいます。
自分が表現したいことが、
常に自分自身のパフォーマンスを少しだけ上回る。
そんな自分の表現の限界を追いかけること。
キャリアを、年齢を重ねるごとに、
怠惰になりがちな自分自身を戒めながら。
一生が修行です。
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