「髪の毛一本」にこだわる。
「ヴォーカル(の音量)、”髪の毛一本”上げてください。」
レコーディングの現場などで、
エンジニアさんに、
ボリュームなどの非常に微妙な調整をお願いするとき、
こんなことばを使っていました。
まぁ、普通に考えれば、
「”髪の毛一本”ってなんや?」
となるところでしょうが、
ベテランのエンジニアさんは、
この”髪の毛一本”というさじ加減が、本当によくおわかりです。
「(音量)上げてください」
と言われたからといって、
いきなり2目盛りも3目盛りも上げてしまうと、
それまでうまく行っていたものが、すべてばらばらと崩壊します。
かといって、今のままではちょっと物足りない。
ベテランのエンジニアさんは、
この辺のニュアンスをよ〜〜くおわかりです。
実際にいじっているのが、
音量のフェーダーなのかどうかは謎ですが、
ホントに、ちゃんと、”髪の毛一本”上がるのです。
プロってすごいなぁと思う瞬間です。
さて。
プレイヤーでも、ヴォーカリストでも、
この”髪の毛一本“レベルにこだわれるかどうかが、
パフォーマンスの精度とセンスを決定づけます。
「気持ちハネ目でやろうか。」
「もうちょっとルーズに弾いてみようか。」
「少し重めにやってみようか。」
センスのいいプレイヤーは、
こんな表現で、ぴたりと相手の望む雰囲気が出せます。
「ハネ目」はハネることじゃないし、
「ルーズ」は音価やピッチをテキトーにやることじゃない。
「重め」と言われて「モタる」なんてもってのほか。
いきなりできることではありません。
日々、いかに細部にこだわって音楽を聴いているか。
どこまで追い込んで練習しているか。
自分の引出しに、どれだけ表現を詰め込む努力をしているか。
一口に「タイム感」「ピッチ感」と言っても、
“髪の毛一本”ずれるだけで、
「最高」にも「イマイチ」にもなり得ます。
気の利いたフレーズをどれだけコピーしても、
“髪の毛一本”にこだわれなければ、
その価値は半減してしまうのです。
「センス」で片付けてはだめなのです。
こだわりです。
こだわれるかどうかが、センスを決めるのです。
“髪の毛一本”。
とりあえずは、
「この人、何言ってるんだろう?」でもかまいません。
このことばを頭の片隅に、
日々の練習や勉強と向かい合っていると、
あるとき、カチンとわかる時が来るはずですよ。
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