慣れない。飽きない。手懐ける。
先日、母と出かけた、とあるテーマパークでは、
野外で、一日中フリーコンサートを聞くことができました。
演奏者はみな外国人。
海外から、オーディションを勝ち抜いてやってきたのでしょう。
歌も演奏も、なかなかのクオリティで、ルックスもいい。
散歩の途中、何度も足を止めては、音楽を楽しみました。
到着した日曜日には園内にもコンサート会場にも
たくさんいたお客さんが、
月曜日には3分の1くらいになり、
私たちの滞在最終日であった火曜日には、人影もまばら。
それでも、コンサートは、定時になるとスタートします。
ステージ周辺には人っ子ひとり歩いていません。
コンサートの特等席にあたる真正面のカフェには、
私たちの他にはカップルのお客さんが1組のみ。
それも、音楽に興味を示す風もなく、
楽しそうにおしゃべりに興じていました。
空っぽの会場に、
日曜日にお客さんを湧かせたヴォーカルトリオが登場し、
ステージがスタートします。
1曲目はお客さんに拍手を要求するジェスチャーをしながらのディスコナンバー。
気恥ずかしいのか、アクションも小さめです。
技術力が高いので、歌のパフォーマンスは大きくは崩れませんが、
それでも、どう聞いても、勢いのない歌です。
あぁ。そうだったよなぁ。。。
お客さんがステージ上のメンバーよりも少ない、
なんてライブを何度も経験してきました。
きらびやかなラウンジでのヴォーカルのお仕事と誘われ、
歌いに行ったら、広々としたラウンジに、お客さんがたった1〜2組。
歌いはじめると、うるさそうに席を移動したカップルもいました。
お店の人に、
「もう少し会話の邪魔にならない曲をやってください」
なんて言われたこともありました。
もちろん、テンションは下がりまくります。
自分の音楽を必要とされていない場面で歌うことほど、
惨めな気持ちになることはありません。
しかし。
それでも、なんでも、Show must go on。
幕は必ず開くのです。
どんな状況にも動じずに、
コンスタントに自分のやるべき仕事をやることは、
ある種、職人的な修行でもあります。
状況に慣れて、手癖で演奏をしたり、
演奏が雑になったり、
やっていることに飽きて、手を抜いてしまうのでは、
ステージアップは望めません。
どんなときも淡々と、
あるべき型をきちんと再現しつつ、
そこにどんな小さな工夫でも、毎回少しずつ工夫を重ねてみる。
そんな努力ができる人だけが、
違うステップに行かれるのではないか。
歴史を越えて「型」を踏襲する役者や音楽家たちも、
ロングラン公演をするパフォーマー人たちも、
みな、おなじように、
工夫に工夫を重ねて、
毎日、おなじ型を再現しながら自分を高めています。
飽きてはいけない。
慣れてもいけない。
「型」を手懐ける。
忘れてはいけない、
忘れたくない、心構えです。

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