リズムが悪いんじゃない。カツゼツが悪いんだ。
昨夜、ヒップホップグループN.W.Aの伝記的映画、
“Straight Outta Compton”を見ました。
何かと議論の対象となる歌詞の内容はともかくとして、
アフロアメリカン特有のリズム感、グルーブ感の心地よさ。
なにより、叩きつけられるに発せられることばのひとつひとつが、
実にパワフルで小気味よいビートを刻みます。
さて。
日本人ヴォーカリストの最も苦手なことのひとつに、
この「ビートを刻む」があります。
「リズム悪いね」と言われて、一所懸命練習をする。
メトロノームやリズムマシンにあわせて歌う。
ドラムやベースの音を必死にとらえようとする。
それでも、なんだかシャキッとしない。
どうもビートが小気味よく刻めない・・・・
リズムやビートが命のロックやヒップホップ系シンガーには、
深刻な悩みです。
日本人がビートをとらえることが苦手な原因は、
実は、日本語の音の成り立ちにあります。
日本語の音声は、
子音と母音がワンセットになって発せられることがほとんど。
そして、アクセントはたいがい、母音の方につきます。
「ワーン、ツー、スリー、フォー」と、
メトロノームにあわせてカウントの練習をしても、
メトロノームの刻む「点」の部分の「ワ」ではなく、
「ぁ〜ん」
「ツ」ではなく、
「ぅう〜ん」
の方に、アクセントが来てしまう。
「ビート」というのは叩くという意味ですから、
本来、ドラムなどの打点に当たるポイントをとらえるべき。
ところが、この「点」が、「線」や「面」になってしまうわけです。
これではビートは抜けてきません。
一方で、英語圏の人がカウントを出すときは、
声の出る瞬間にアクセントをつけます。
“One”なら最初の【W】、”Two”なら【T】。
だから、点を確実にとらえられるわけです。
また、日本人は母音にアクセントをつけることも苦手です。
英語圏の人たちが”I”と頻繁に発音するように
母音にアタックをつけて発音することが少ないからです。
リズムがいいと言われるシンガーは、
みな、ことばの立ち上がり、
つまり、音の出だしをきちんと「点」で表現できているのです。
リズムは、まず「点」。
がんばって練習しているのに、リズムがよくならない。
評価が上がらないという人は、
もう一度、「点」を見直して、
くっきり発音できるように練習してみましょう。
すべての音を「ぱきん」と「点」で表現できるようになったら、
その「点」を楽器の「点」と一致させられるトレーニングをする。
これだけで、リズムはぐんとよく聞こえるものですよ。
◆コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』。限定公開のレッスン映像もごらんいただけます。購読はこちらから。
◆自宅で繰り返し、何度でも。ヴォイス&ヴォーカルのすべてが学べる【MTL Online Lesson12】。
次期受付開始は今しばらくお待ちください。
◆10月29日(日) 鹿児島にて【MTLワークショップ in 鹿児島】を開催します。
関連記事
-
-
準備せよ。そして待て。
道が開けないとき。 ツキがやってこないと感じるとき。 過小評価されていると思える …
-
-
うまくなる人。ダメな人。
「歌は、誰だってうまくなる。」 20年にわたるヴォーカル・トレーニングを通じて確 …
-
-
高揚感を抱えて眠れ〜LIVEの夜の過ごし方〜
演奏者がLIVE終了後にどんな気分でステージを降りるかは、 ミュージシャンの性格 …
-
-
「今日はノドの調子が悪くて・・・」
誰にだってのどの調子の悪いときというのはあります。 どんなに気をつけていても、あ …
-
-
歌の練習がきっちりできる人の5つの特徴
「練習しなくちゃと思ってたんですけど、なかなか・・・」 状況にもよ …
-
-
「他者基準」で自分をジャッジしない。
才能あふれる若者たちを教える機会に恵まれています。 レッスンのたびにワクワクした …
-
-
「ライブ当日って、何したらいいんですか?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2015年11月2 …
-
-
耳で聞くのではない。脳で聞くのだよ、明智くん。
少し前、まずオケを聴け!歌うのはそれからだ!という記事で 歌のピッチやリズムが悪 …
-
-
「売れ線狙い」は劣化コピーを生む。
「これ、今、売れてるから、この路線で行こう!」 そんな風に言うおじさまたちが、一 …
-
-
聞いてるつもり。できてるつもり。がんばってるつもり。
「え?ホントにそんな風に聞こえるの? なんでそんな風に聞こえるかなぁ・・・・」 …
- PREV
- カムバックを狙え!
- NEXT
- 『この人、うまいの?』