大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

空白の美学

      2017/08/20

「アマチュアはね〜、ソロ弾いてっていうと、
全部音で埋めちゃうんですよ。

弾かないことも大事だって、なかなか思えないんですね。
埋めないと不安なんでしょうね。」

かつて、とあるキーボーディストの方が、
そんなことを言っていました。

 

そういえば、どなただったか、

日本でアレンジ&レコーディングしたものを、
LAのサウンドプロデューサーに託したら、
こんなにたくさん音はいらないよと、
いろんな音を間引かれて・・・

「最終的にはすっかすかになって戻って来たんだけど、
それが、やけにカッコよかったんだよね。」
なんて言っている人もいたっけ。

「日本人はついつい音で埋めちゃうんだねー」

 

「空間」とか「間」とかっていうのは、
日本文化の特徴だったんじゃなかったっけ。。。

思わず、日本画に思いを馳せ、
不思議に思ったことを思い出します。

 

「間」を不安に感じてしまうのは、
ヴォーカリストもおなじです。

アカペラで歌う場面で、
ゆったり歌えず、ついつい間を詰めてしまいます。

「沈黙」や「間」に不安を感じてしまうのでしょう。

 

確かに、無音と沈黙、スポットライトの真ん中で、
ひとりたたずむ自分を
たくさんの人がじっと見つめている・・・そんな状況下で、

ゆったりと間を取って歌うのは、
ベテランでも、なかなかに勇気のいることです。

ところが、オーディエンス側になってみると、
その「間」がなんとも言えず、ワクワクする。
ふと生まれる音のすき間に、胸躍るような感覚を得たりもする。

 

空白にこそ、宿る「なにか」があるはずです。

 

いつからか、日本人は、
いや、現代人は、
空白恐怖症に陥っているかのようです。

 

友達の家に遊びに行ったとき、
家につくなり、
いきなりテレビのスイッチをONにして、
会話をしていても、食事をしていても、
そのまま、ずぅ〜っとつけっぱなしにしていて、
酷く驚きました。

「落ち着かないから」と、
BGMを流し続ける人もいけます。

 

会食の場でも、
ひっきりなしにスマホをチェックしたり、
写真を撮って、SNSに投稿したりして、
お仕事とはいえ、妙に落ち着かない方もいます。

「最近のカップルはデートしてても、ずっとスマホを眺めている」
とはよく言われることば。

 

 

・・・かくいう私だって、

スマホがチェックできないと、なんだか落ち着かない、
仕事中でも、新着メールやらSNSのレスやら、
なんなら「いいね」の数が気になってしまうこともしばしば。

 

今日こそ、スマホやPCを見ないでおこうと決めた直後に、
そういえば、あれって・・・?
とググったりする。。。

 

「空白」を受け入れるのに、勇気と決意が必要な時代です。

 

 

 

今こそ、「空白」を噛みしめ、味わうとき。

 

空白は想像力で埋める。

空白は思考で埋める。

空白を空白のまま楽しむ。

 

発想は「空白」に宿るのである。

 

 

空白の美を感じられるからこそ、
「埋めない」を楽しめるようになる。

 

 

自分と対話することで発見できること、
まだまだたくさんあるようです。

13665649 – on line trader concentrating on laptop with headset

◆ 9月9日(土)【MTL Live 12】MTLの文化祭&感謝祭、開催

◆ 9月30日(土)【第4期 MTLヴォイス & ヴォーカル レッスン12】開講決定!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』購読はこちらから。

 - Life

  関連記事

「人生のピーク」なんて、死ぬまでわからない

世界的に活躍し、海外の大きなホールでコンサートなども行ったことのある、 ミュージ …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話②

まだセミアマぐらいだった頃、 映像系音楽プロデューサーの アシスタントをしていま …

どうせやるなら「ザ」のつくプロフェッショナルを目差せ!

先日、とある販売店でのこと。 まだまだ新米臭のある若者が、私たちの担当になりまし …

自分を好きになる10の方法

自己評価が低いと、なにをやっても心底楽しめないばかりか、 行動の精度もあがらない …

「たった5分」に情熱を傾けるのは不毛ですか?

高校時代のお話です。 文化祭前に来る日も来る日も練習に明け暮れる私に、 同級生の …

メイクに目覚める年齢 vs. あきらめる年齢

大学4年の頃、よく遊んでいた同級生の男子に、いきなり、 「っていうかさぁ、コサカ …

何ごとにも終わりはくる。絶対の絶対に、くる。

好きなことしかやりたくない。 こうと決めたら即断即決即行。 私自身は、いわゆる「 …

横を向かない

悪口を言われれば誰だって少なからず傷つく。 一所懸命取り組んでいることを、批判さ …

人には、人の「道筋」がある。

学生時代、得意だった科目に『論理学』があります。 一般教養の範囲ですし、 正直、 …

ああ、テクノロジぃい

音楽家ってのは、(いや、ヴォイストレーナーってのもそうか。)ゴールデンウィークと …