「営業」なんて、無理!
「あいつは営業がうまいからね」
若かりし頃、
実力もセンスもイマイチのはずなのに、
そこそこ売れているミュージシャンを、
影でそんな風に噂する人に、よく出会いました。
ツアーのお仕事が突然なくなって、
バイトを探すくらいならと、
世間話を装って先輩ミュージシャンに電話をかけ、
切りぎわに「なにかお仕事あったらよろしくお願いします」と、
勇気を出して言ったら、
「お前さ。似合わない”営業”とか、すんなよ。」
と、斬って捨てられたこともあります。
音楽メインではない、
イベントやパーティーに呼ばれて演奏をすることが多い人が、
「最近は、営業ばっかりで」などと、
卑下して言うときにも使われていました。
そんなこんなで、
「営業」ということばには、
ずっと負のイメージを持っていました。
一昔前の音楽業界では、
「名刺なんか持ち歩くミュージシャンは、
俺は売れてませんって宣伝するようなもんだ」
などとも言われていたくらい、
自分からアピールしなくちゃ、
認知されないようなミュージシャンは、
「残念なミュージシャン」という風潮が、
うん。絶対あったと思います。
起業を思い立ってビジネスを学ぶようになって、
真っ先にひっかかったのが、
この「営業」ということばです。
「営業の力さえあれば、
どんなビジネスでも成功する。」
そんなことばを耳にするたびに、
絶望的な気持ちになったものです。
人に売り込むことはダサいことだと、
思い込んで20年以上業界でお仕事をしてきたのに、
今さら、どう考え方を転換したら、
「お客様、これ、いかがですか?」
なんて、作り笑いを浮かべられるのか?
しかしです。
とある出版セミナーに通うようになって、
各界の専門家中の専門家と肩を並べて学ぶうちに、
「営業」ということばの真の意味を、
完全に誤解していたことに気づいたのです。
自分が心から感動したことは、
思わず誰かに話したくなる。
心の底から信じていることが、
今、目の前にいる誰かにとって、
絶対に必要な情報だと感じたら、
何が何でも伝えたくなる。
そんなエネルギーが相手の心を動かして、
行動に駆り立てる。
こちらが勧めたものを手に取ってくれたり、
自分の人生を変えた講座に通いはじめてくれたり。
そっか・・・
そう考えはじめたら、
高校時代に、隣の席に座った子がいきなり言った、
「えーっ!まだビートルズとか聴いてるの?ダっさい!
ゼップ聴かなくちゃ。」も、
ミュージシャンの先輩に言われた、
「真面目に音楽やりたいなら、
マトモなレコーダーとマイクくらいは買わなくちゃ」も、
コーラス時代の相方に言われた、
「マスカラはとりあえずランコム買っときゃ間違いないわよ」も、
同じことだよなと、気づいたのです。
そういえば、
スタジオでお仕事にたくさん呼ばれるようになったのも、
単に声が大きいとか、音域が広いとか、
そういうことではなかったよなと。
相手から要求されるお仕事を、
ただ、やっていただけではなくて、
「もっと高い音域のコーラス入っていた方がカッコいいですよね?」
「ここに英語の歌詞がばしっとハマったら、よくないですか?」
「最後はドカンとフェイクしたくなっちゃうんですけど。」
などなどと、
自分が信じるままに、ぐいぐい相手に語ったことで、
お仕事の現場が盛り上がったり、
「想定以上に作品の仕上がりがよくなった」
と、思ってもらえたからではなかったか?
これって、もう、立派な「営業」です。
もしかしたら私もどこかで、
「あいつ、”売り込み”うまいから」と、
噂されていたのかもしれません。
心からいいと信じることを、ものを、
必要としている人、
喜んでもらえる人に情熱を持って勧める。
大事なのは、マックスのエネルギーと、
伝える力。
すなわち、ことばの選び方。
表現力。
そして、もちろん、声の力。
コラボセミナーの準備をしながら、
そんなことを再確認している日々です。
元ショップチャンネルの人気キャストであり、通販トークアドバイザーの稲垣玲子氏とのZOOMコラボセミナー、“「思わず、買ってしまう」を演出する心に刺さる伝え方”。こんな時代だからこそ、知っておきたいセールス・トークの極意を圧倒的な情報量でお届けする3時間セミナーです。
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