大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

まず、自分の出音(でおと)をちゃんとせい。

   

トレーナーズ・メソッド、リズム編のテキスト制作中にて、
古今東西のドラマーの名演や、
レクチャー映像の数々をサーフィンしています。

数枚の写真以外、顔も見たことがなかった伝説のプレイヤーたちが、
あんな曲や、こんな曲を叩いているようすや、
その曲について解説しているビデオを見つけては、
感動したり、興奮したり。

本当に、いい時代になったものです。

調べ方さえ正しければ、
たいがいの情報は手に入ります。

ネットサーフィンのおもしろさは、
どーでもいい情報も、
素晴らしい情報も、
分け隔てなく表示されること。

名だたる名ドラマーの名演が、
ぽろぽろ転がっているかと思えば、
プロによる、その名演の解説&レクチャー映像があって、
器用にマネをしているYoutuberたちがいて、
音楽を楽しんでいる愛好家たちの映像があって。

 

さて。
興味深いのはここからです。

超有名曲ですし、
攻略法みたいのもたくさん出回っています。

ギターなどと違いドラムの場合、
やっていることがすべて見えるということもあって、
プロでもアマチュアでも、巧みにマネして、
それなりの雰囲気で叩いている人はたくさんいます。

しかしね。

さんざん、レクチャー系、叩いてみた系映像を見た後に、
再びご本家の映像を見ると、
もうね、音が出た瞬間に、決定的に違うんです。

問答無用。
一瞬で、すっげぇ〜〜、と持って行かれる。

とにもかくにも、音です。
出音が全然違うんです。

本物のプレイヤーって、
自分の音に、ものすごくこだわります。

ドラマーしかり。ギターリストしかり。
もちろん、ヴォーカリストも同じです。

自分の「音」を極めるのに、
ものすごく時間とお金と労力をかけるものなのです。

いや。
高いセットを買えとか、
ビンテージギターを買えとか、
そういうことじゃない。

今、ここにある機材で、
どうやったらいい音を出せるか。

ドラマーならチューニングや、
スティックをあてる角度や、
そんなことで、自分にとってベストな音はなにかを
徹底的に追求します。

昔、スティーブ・ガッドが来日して、
スタジオにふらりとやってきた、という話を友人から聞きました。

機材どうしますか?セットは変えますか?と、
大騒ぎするスタッフを尻目に、
スティーブガッドは、
スタジオにあった、とてもいい状態とは言えないドラムを
ポンポンポンとチューニングしたかと思うと、
いきなり叩き始めたそうです。

「いやー。そしたらね。もう、ばっちり、ガッドの音なわけよ。」

やっぱり、一流はすごいよ。とその人が、
ひどく感動していたのを覚えています。

ヴォーカリストも同じです。
やれ、ここは、なんちゃらボイスだとか、
ここはこんなテクニックつかって、
こっちはこんな声出して…などと、
小手先のテクニックや、
My マイクにこだわる前に、

まず、自分の出音をちゃんとせい、と。

いい音しない楽器で何弾いたって、
やっぱりいい音しないんですね。

出音がグルーヴの基礎です。

出音がいいかどうかって、
音楽家のスピリッツだと思うわけです。

なんか、久々に、音楽家魂にメラメラと来ている、
今日この頃です。

◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
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