「自分の本当の声」ってなんだ?
「私の本当の声ってどんな声なんでしょう?」
シンガーやパフォーマーに限らず、
一般の方からも、そんな相談を受けることがあります。
いろんな声が出るのだけど、どれが本当の声かわからない。
どうやって声を出したらいいのかわからない。
ちゃんと声を出せているのか不安だ・・・
そして、こんな悩みを誰に相談していいか、
ずっとわからなかった、と言います。
「自分の声に自信が持てない」というならまだしも、
「自分の本当の声がわからない」というのは、
いったいどうしたことでしょう?
ここで、おさらいです。
声は音。音は空気の振動でした。
声は物理なんですね。
お茶碗を叩けばお茶碗の音がする。
木琴を叩けば木琴の音がする。
人は、お茶碗や木琴の音を聞いて、
これが本当のお茶碗の音?木琴の音?なんて、
思ったりしません。
そういうものだからです。
犬が吠えれば犬の声。
馬がいななけば馬の声。
鳥がさえずれば鳥の声。
人間のカラダだって、おんなじ。
自分のカラダから発される音は、ぜんぶ自分の音です。
ここに疑問の余地はありません。
お茶碗や木琴や、
犬や馬や鳥と人間が違うのは、
人間が、人間であるという点だけです。
人間の「本来の声」の極みは、
産声ではないか、と考えています。
なんの情緒的ストップもかからない。
環境遺伝にも左右されない。
楽器そのものの音。
生きとし生けるものが発する生命の音。
やがて成長し、ことばを学び、
さまざまな生活習慣を身につけ、
さまざまな感情を知り、
おとなになっていく過程で、
声も人と共に成長し、環境に適応し、
さまざまな音の表現、
感情表現を身につけていくわけです。
もちろん、声の音色は
発声器官の形や状態で決まる部分も大きいので、
遺伝的要素は無視できません。
しかし、
人間の声は、
感情の動き、カラダの状態にともなって、
刻一刻と変化します。
そういう意味では、
声の音色は自分自身が選び取っているともいえる。
すべて、自分の声であり、
自分自身の一部です。
さて。
では、なぜ、
「自分の本当の声がわからない」
という感覚にとらわれるのか。
それは、自分自身の感情や感覚と声とを、
うまく繫げられていないからです。
感情のブレーキをかけてしまう癖、
自信が持てない、
自分が好きになれないなどの心の状態、
発声器官の運動機能の低下、
間違って覚えてしまった発声フォームなどなどのせいで、
「こんな声を出したい」という衝動に、
発声器官が応えてくれない。
出てくるはずの音が出てこないから、
こんなはずじゃない、
これは私の声じゃない、と感じるわけです。
こんな人たちにまず必要なのは、
自分自身の声の歴史を振り返ること。
自分の声が気になるようになったのはいつ頃からか。
変化や不自由を感じるようになったきっかけはあるのか。
生活や環境の変化、心身の状態の変化はどうか。
そうやって思いを巡らせていくと、
必ず、自分自身の声の転機と言うべきタイミングがみつかります。
きっかけがわかれば、
自分自身の感情、感覚が、
なぜ気持ちよく「声」と繋がれないのかも、
少しずつわかってくるものです。
ヴォイトレをはじめて、
声を出しているうちに、
感情のブレーキがはずれ、
モヤモヤが吹っ飛ぶケースも多々あります。
歌の練習を重ね、
声が自在に出るようになることで、
自信が育つという人もいます。
一方で、
心の棚卸しをしただけで、
すっきり声の悩みがなくなるという人もたくさんいます。
なにはともあれ、
「自分のカラダから発される音は、ぜんぶ自分の音。」
このことを忘れずに、
気持ちよく声を出してくださいね。
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