大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「自分の声が嫌い」をやめる方法

   

自分の声が嫌い。

この、やるせない思い。
実は、”Voice confrontation”という名前のついた、れっきとした心理現象。
一部研究者のたちの研究の対象にまでなっています。

カンロ株式会社の2011年9月の調査によれば、声に自信がない、自分の声が好きではない、という人は全体の70%以上。
程度の差こそあれ、ほとんどの人は自分の声になにかしらの不満や不安を持っているということになります。

「自分の声が嫌い」という人みんなが、必ずしも、世に言う「悪声」なわけではありません。
むしろ、他の人が聞いたら、魅力的な声、可愛い声、であることも多々あります。

「私、こどもの頃、自分の声が大嫌いで、声の整形をしたいって毎日悩んでいたんです。」
某人気声優にこんなことを打ち明けられて、ひっくり返りそうになったこともあります。

「自分の声が嫌い現象」は、なぜ起きるのでしょう?
ここでは、その理由と、対処法を書いてゆきましょう。


 

Fact 1. 「こんなはずじゃない」という違和感

自分の声に嫌悪感を抱いた最初のきっかけが、「録音された自分の声を聴いたから」という人は多いはず。
私たちが日頃、自分の声を聞く時は、口から出た音を耳でキャッチすると同時に、骨伝導によって、自分のカラダの内部を伝わる音も同時に聴いています。
録音された自分の声に違和感を覚えるのは、この骨伝導の成分がないからです。

この「違和感」が、嫌悪感の引き金になります。
さらに、「自分以外の人はこんな声を聞いているんだ」という思いが、嫌悪感を増幅させます。

 

To Do 1. ザイアンス効果で、とにかく慣れる

「人は、おなじ人や物に接触する頻度が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになる」と言われています。
ザイアンス効果(単純接触効果)です。

声もおなじ。
初めて聞いたときは、耳を覆いたくなるほどの違和感、嫌悪感を覚える自分の声も、たびたび、何度も、繰り返し、聞いているうちに、「これが自分の声なのだ」とハッキリ自覚できるようになります。

やがて、どんな時、どんな風に声を出すと、どう聞こえるのか、客観的に自分の声を聞いた時の効果を予想しながら、声を出すことができるようになっていきます。

まずは、「聞くのをやめたい」という衝動を抑えて、単純接触機会を増やすこと。
どんなことも、慣れるにはそれなりの時間がかかります。

自分の声から逃げない。
ちゃんと向き合う、ちゃんと付き合う。
この覚悟が、大きく前進するための、はじめの1歩になるのです。

 

To Do 2. 「メイクアップ効果」で「勘違い」を手に入れる

寝起き、すっぴんのまま写真を撮られて、「あら、美人(ハンサム)」と自分自身にうっとりできるのは、よほどの美形か勘違いの天才のどちらかでしょう。

たとえ寝起きじゃなくても、女性の多くは、すっぴんのまま人に会うのを恥ずかしいと感じるもの。
だからお化粧をするのです。

メイクの効果は素晴らしいものがあります。

ちょっとファンデーションを塗るだけでも、顔色がよく、健康的に見える気がします。
若返った気持ちにさえなります。
お化粧がキマれば、ぐっと美人になった気がしますし、周囲の視線や、自分に対する扱いさえ違うと感じられることもあります。

「上手なメイクさんにメイクをしてもらったら、自分の思わぬ魅力に気付いて、急に自分の顔が好きになった」ということも起こり得ます。
「スマホで自撮りする時、必ずアプリをつかうようにしたら、自分の顔に自信を持てるようになった」という人もいます。 

勘違いでいいんです。
その「勘違い」が大事なんです。

 

声もおなじです。まずは「いい状態」で自分の声を聞くことが大切なのです。

よい録音で録られた、自分の「いい声」を、よいスピーカーやヘッドフォンなどで聞くと、「あら?自分ってこんなにいい声だったっけ?」と思えることがあります。

カラオケ店でリバーブやエコーをかけて歌うと、うまく歌える気がするのもおなじ効果です。

どんなに「いい声」でも、スマホでダイレクトに録音し、スマホのスピーカーで聞いたのでは、そのよさは半分です。

勇気を出して、いいマイクや録音機器で、ちゃんと録音してみる。
アプリなどで声を整える。
スピーカーやイアフォンを変えてみる。

こうした積み重ねで、自分の声の聞こえ方や、声に対する思いが大きく変わります。

 

Fact 2.イヤなのは自分の声だから

アメリカの研究者が80名の男女を対象にした調査で、自分の声が混じっていると知らせずに、複数の人の声の録音を聞かせ、好き嫌いを判断させたところ、ほとんどの人が、他の人の声よりも自分自身の声を魅力的であると感じ、高く評価したそうです。

人は「自分の声だから、嫌い」なのです。

 

TO Do 3. 自分の好きなところを100個書く

「自分の声が嫌い」と感じるのは、「鏡を見るのがイヤでたまらない」というのと同じです。
実際「自分の声が嫌い」という人の中には、鏡を見るのも苦手という人がたくさんいます。

自分の嫌いなところにばかりフォーカスしてしまうのは、思考の悪い癖です。

嫌いなところを気にして、そのことばかりグルグル考えているうと「嫌な記憶」がどんどん定着してしまいます。
声を出した瞬間、即座に嫌いな部分に意識がフォーカスし、そのたびに嫌悪感が増幅します。

嫌い、出したくない、自信がないという思いで声を出せば、緊張が増し、呼吸は浅くなります。
これではいい声が出るわけはありません。
負のスパイラルです。

この思考の悪い癖を上書きして、スパイラルを上向きにして行くことが肝要なのです。

「自分の声が嫌い」という人たちにやってもらって、高い効果を上げてきたのが、「自分の好きなところを100個書く」というエクササイズ。

自分の声、容姿、性格の好きなところを100個、書いてみてください。

10個も書けないという人がいます。
課題自体が苦痛でたまらない、という人もいます。
しかし、だからこそ、向き合うのです。

人から誉めてもらうことから書き始めても大丈夫。
お尻がむずがゆくなるようなことこそ、どんどん書いてください。
意識のフォーカスを変えることが目的です。

誰に見せるわけではありません。
恥ずかしいと思うようなことも、がんがん書いて行きましょう。

自分の好きなところを100個。あなたには書けますか?


 

一生で、一番自分の声を耳にするのは自分自身。
自分の声を好きになってあげることは、自分自身を大切に思うこととイコールです。

声を変える必要はありません。
あなたが持って生まれた声は充分素晴らしい。
ただ、その声をうまく取り出せていないだけです。

ありのままの自分を好きになるように、
ありのままの自分の声を好きになる。

それがスタートであり、ゴールです。

 

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MTLビジネストレーニング

 - ビジネスヴォイス, 声のはなし

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