言い切ったもんが勝つ。 そして、言い切れるやつは本気でカッコいい。
「自分を信じる力を才能という」
かのジョン・レノンの名言として、
とある雑誌で紹介されていたこのことばに、
ガーンと胸を打たれたのは高校2年の頃だったか。
自分を信じる。
では、一体、自分の何を信じる?
才能がある人間だから自分を信じられるんじゃないのか?
信じるに足る自分自身が見出せないから、
凡人は凡人と言うのではないのか。
アマチュア時代はもちろん、
プロになってからも長い間、
思う方向にキャリアが転がっていかないジレンマに苦しんでいた私は、
さまざまな人のことばに翻弄されながら、
常に、そんな自問を繰り返していました。
20代の終わり頃だったか、
レコーディングの仕事でロンドンに行ったときのことです。
ふらりと入った美術館で、
ポップアートの展覧会をやっていました。
ポップアートというものをよく知っていたわけではありません。
正直、なんじゃこりゃ、という作品が並んでいます。
そして、その「なんじゃこりゃ」が、
ものすごいエネルギーを放っているんですね。
洗剤の箱。
スープの缶。
汚れた靴。
トイレの便器。
ハンバーガー。
使用済みのティッシュやコンドームが詰め込まれたゴミ箱。
さび付いた工具。
どこにでもあるものが、
どこにでもあるように転がっている。
でも、アーティストは、
それが気になって、
そこにパワーを見出して、
「爆発だ」とばかりにつなぎ合わせて、
タイトルをつけて、
「これ、アート作品だから」と言い切る。
国立美術館に、持ち込む。
「すっげーーーー」と心の中で叫びました。
いや、もう、「すっげー」しか出てこなかった。
これこそが、「自分を信じる力」です。
言い切ったもんが勝つ。
そして、言い切れるやつは本気でカッコいい。
「AはBである」とか、「BはCである」とか、
そんなことを言い切る才能は、
私にはないかもしれない。
でも、
「あたしはAが好きである。
だから、Aには価値がある。」なら、
確実に言い切れると強く思いました。
で、
「なんか、文句ある?」だよなと。
今も、自信が揺らぎそうになると、
アートを見に行きます。
そして、そんなときは、ルールも秩序も超越した、
ポップアートを見るのが一番効きます。
自分の「好き」に敏感になる。
「好き」を信じる。
「好き」を貫く。
自分にとっての真実って、
それがすべてです。
◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
「興味を持ってもらう」 ただそれだけで、 人はどれほどのエネルギーを受け取れるのか。
自主ロックダウンも間もなく40日。 少し前から、インターネットの紹介サービスを利 …
-
-
人はみんな、違うのだ。だから、おもしろいのだ。
音楽というのはある種のトリガーで、 サウンドやフレーズや声が 感情とか記憶とか、 …
-
-
習慣化するための3つのコツとくふう
自主ロックダウンスタート以来、 新しい習慣がいくつかできました。 毎朝のヨガ(3 …
-
-
「表現したい」という欲求は、 それが可能な人にのみ与えられるエネルギー。
「クリエイティビティの源は何ですか?」と聞いたら、 「リビドーですよ」と答えたア …
-
-
レコーディングでうまく歌えない原因と対処法。
先日メルマガのお便りフォームに、下記のような質問をいただきました。 (一部プライ …
-
-
声を伝えるのに必要なのは「デリカシー」。「気合い」じゃないんですよ。
音の波形ってみたことありますか? 音は空気の振動。 特殊な装置をつかうと、 その …
-
-
肉体は変化する
ずいぶん前のことになります。 クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、 友 …
-
-
「好きなことを仕事にできていいですね。」
「好きなことを仕事にできていいですね。」 はじめてこ …
-
-
ボーカリストが20代のうちにやっておきたい10のこと
10代、20代のアーティストたち、学生たちを見ていると、 彼らの脳や肉体の柔軟性 …
-
-
ノドを痛めるのは「大きな声を出すから」ではなく「出し方が悪いから」
「大きな声=ノドを痛める」と思っている人が、 あまりに多いことに、いつも驚かされ …
- PREV
- 不安を煽る「洗脳営業」に騙されない!
- NEXT
- 「自分の本当の声」ってなんだ?