大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌詞が覚えられないのは、意味をわかっていないから。

      2016/07/19

「歌詞って、覚えられないんですよね。
どうしても、カンペ貼っちゃうんですよ。」

 

なるほど。20曲くらい歌うんでしょうか?
それじゃ、なかなかハードでしょうね〜。

 

「え・・・?いやぁ、まぁ、1~2曲だけなんですけど。英語なんでね。
長年歌ってるんですけど、どうしても覚えらんないから、ついつい見ちゃうんだな〜」

 

 

みなさんは英単語の暗記というのをしたことがあるでしょうか?

受験のために詰め込んだ英単語も、その意味やことばの成り立ちをしっかり頭にいれたものは、一生忘れられないくらい、しっかり記憶に刻まれてませんか?

 

英語の歌詞が覚えられないという人の8割が、ことばの意味をきちんと理解していません。

ちゃんと意味わかって歌っているの?と聞くと、

「はい!ちゃんと調べました!」と言う。

 

そこで、1フレーズ取り出して、じゃ、これ、どういう意味?と聞くと、今度は訳詞のカンペを取り出して、

「え〜、『あなたは私がこれまで持っていたものの中で一番素晴らしいものだ』っていう意味です・・・」

などと言うのです。

 

これではもちろん、わかっていることになりません。
直訳した文章を読むことが外国語をわかっていることになるのなら、アラブ語やインド語だって、おんなじくらい「わかってる」ことになります。

 

わかっていることばというのは、思わず口から出ることば。

思いを伝えたいと思った瞬間に、自ら無意識に選び取ることばのことです。

 

「いやいや。MISUMIさん。外国語わかんないんで、それがどんな感じなのか、イメージもできませんよ〜」

 

そうでしょうか?

 

たとえば、何にも考えなくても思わず口にでる、最早日本語になっているような英単語ってあるはずです。

江戸時代じゃあるまいし、誰だって、1~10くらいの数字は何にも考えずに数えられるはずですし、発音はともかく、HelloやThank youくらい外来語として普通につかう。

そのレベルで、理解することを「わかっている」というわけです。

 

 

もちろん、そこは外国語ですし、詞ですから、100%完璧に作者の意図するところがわかるわけではありません。

拡大解釈でも、意訳でも、なんでもいい。

ただ、ことばが口から出るときに、自分がその意味を確信しているかどうかが大切なのです。

 

意味をしっかりわかっていることばを言い間違えることはありません。

I love you をHow much?と言い間違えてしまうことは、どんなに英語音痴でもあり得ないことです。

 

意味をしっかりわかった上で、そのことばが語られているストーリーをしっかりと感じ取る。自分自身と重ね合わせる。
役者さんが本番前に来る日も来る日も稽古をするのは、自分自身を演じるキャラクターと完全に同化させるためでしょう。

 

「結構大変ですね〜。みんな、そんなにやってるんですか〜?」

 

ぶっちゃけ、そこまで追い込める人は、めったにいません。

だからこそ、それをした人だけが特別になれるんです。

 

そこまでは行かれないにしても、お金をいただいて人前で歌うからには、
せめて、意味くらいわかって、歌詞くらい覚えて歌って欲しい。

 

英語であれ、日本語であれ、歌詞が覚えられないからとカンペを貼ることに慣れてしまうと、ハッキリ言って、一生その歌は覚えられません。
 

そして、ことばの意味をしっかりわかった上で口にするのは、社会人なら当然のこと。

日常の中で、意味のわからないことばを大きな声で叫ぶのは、ちょっとイカれた人だけですからね。

 

19200274 - young man sing growls in hard rock concert

 

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, イケてないシリーズ

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


  関連記事

1音にこだわる!~Singer’s Tips #6~

歌のトレーニングの基本中の基本であり、 上達のために最も重要なことのひとつは、 …

時間がかかることを怖れない

本気でうまくなりたいなら、「この1曲」と決め、歌いこなせるようになるまで、とにも …

学習は、頑固で怠惰な自分の脳との戦いだ!

本来外来語であることばを、 そのまま日本語の音に置き換えただけの「カタカナ語」。 …

ルーティンワークで「微差」をつかまえる。

鰻屋を営んでいた母方の祖父は、 生前、お昼ごはんに、 毎日お店の鰻重を食べていた …

「同じに出す」が一番難しい。

同じ音を連続して弾くとき、 ピアノという楽器の完成度の高さを、 しみじみと感じて …

「初めて」が「自分の基準」になる!

オーディションなどの審査をするとき、 最初に出てきたパフォーマーが、まずは採点の …

カバー曲の歌唱にオリジナリティをプラスする3つの方法

「オリジナリティ」と「クセ」は紙一重です。   「オリジナリティあふれ …

頑固な、間違ったプログラムを解除して、「声」を解放する

カラダの構造や、発声のメカニズムを教えて、左脳からアプローチしても、 カラダに触 …

ストライク率を限りなく100%に近づける

こどもの頃からずっと謎に思っていることのひとつに、 「ボーリングって、なぜゲーム …

歌も演奏も一瞬で上達する華麗なる方法

長年にわたり、音楽学校や音楽大学で、 学生のアンサンブル授業を担当してきました。 …