大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「面白くないな」と思ったら、まずは自分自身を見直す

   

「教える側が優秀な生徒や、可愛い生徒を贔屓(ひいき)するのは当然だ。
世の中不公平なものだ。
悔しかったら、贔屓されるような存在になればいい。」

 

数年前に通っていたセミナーで、講師の先生が、
激しい口調でそう明言していました。

さすが一流と呼ばれる人は厳しいことを言う。
一瞬凍り付きながらも、その潔さに感服したものです。

 

なかなかここまでキッパリとは言えるものではありませんが、

私自身、常日頃、教える側をその気にさせる子と、
そうでない子というのがいると感じています。

 

もちろん、教える側がプロフェッショナルなら、
どのような時も、どんな生徒に対しても、
一定のレベルに達したレッスンが要求されるのは当然です。

少しでもクオリティの高いレッスンをする努力は、
けして怠ってはならないでしょう。

 

しかし、です。

教える側だって生身の人間。
そして、師弟関係であれ、徒弟関係であれ、人間関係。

 

頭をひねって、あの手この手でがんばっても、
コミュニケーションでつまずいて、のれんに腕押しのような生徒より、

がんがん向かってくる、エネルギーのある生徒の方が
より質のいい、エネルギー量の多いレッスンを受けられるのは当然です。

 

教える側と、よい人間関係を築けるかどうかで、
レッスン料や学費のコスパは信じられないほど違ってくるのです。

 

 

さて、プライベートレッスンであれ、学校であれ、
教える側のパワーを奪う、
イケてない生徒というのは一定の割合で登場します。

 

コミュニケーションを回避する。

都合いいようにウソをつく。

会話が成立しない。

とりあえず出席のために来ました、というのが見える。

(病気という子は別として)自己管理が悪くて欠席が多い。

予習復習を(ほぼ毎回)充分にしてこない。

上達したいという意欲が感じられない・・・etc.etc.

 

 

こちらは音楽や歌の専門家なのに、
試されているポイントが全然違うように思え、
がっかりすることしばしばです。

エネルギーが吸い取られ、疲労困憊となるときさえあります。

 

一方、「その気にさせる生徒」とのレッスンは、正反対。
大いに盛り上がります。

教えていたこちら側が、レッスン後、
エネルギーで満たされていると感じることさえあります。

 

生徒の歌を聴きながら、あまりの進歩にドキドキして、
涙が出そうになるときもあります。

練習してきたのが、痛いほどわかるのに、どうにも上達していなかったら、
自分の教え方がまだまだなんだ、どうしようと、何日も悩みます。

驚くスピードで上達していく子のために、次々と新たなカリキュラムをつくり出すときもあります。

なにを要求してもあまりに食らいついてくれるので、
プロとしてのノウハウをあますとこなく活用し、
気づけばめちゃめちゃしごき倒していた・・・なんて子もいます。

 

 

音楽家として、トレーナーとしての自分が極限まで試されていると感じるほど、集中力が異様に高まったり、興奮してドキドキしたりすることもあります。

レッスンが一騎打ちのような、真剣勝負になることさえ、本当にあります。

 

教える側だけがレッスンのクオリティを決めているのではないのです。
なんだか、レッスンや学校が面白くないな、と思ったら、
まずは自分自身を見直してみることも、大切だということです。

58163212 - black and white primary school scene. education concept.

 - イケてないシリーズ

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