ピッチが悪いの、気づいてます?
少し前のこと。
知人に誘われたとある会社のパーティー会場の片隅で、
いきなりジャムセッションがはじまりました。
聞けば、その会社の社長さん、ギターがご趣味。
ご自身でバンドもやられているとか。
しばらくすると、社長さんと、
バンド仲間と思われるヴォーカルの女性の演奏がはじまりました。
ヴォーカルの女性は、実にダイナミックなスタイルで、
ブルースナンバーを、思いきりアドリブしながら歌っています。
よく通るいい声です。
英語も達者なようです。
日本人には、そうしたダイナミックな、
思い切ったアドリブをできる人というのが少ないので、
日本のアマチュアにも、こんな風に歌う人がいるのだと、
関心しながら聞いていました。
まわりのお客さんの中にも彼女のファンがいるようで、
「いやぁ、彼女の歌はいつ聞いてもすごいなぁ」
と言っています。
社長の粋なギターも、いい感じで、
会場は大いに盛り上がりました。
やがて、しばらくして、歌い終えた彼女が近くにいる人たちに、
「私はプロだから」と言って歩いているのが耳に入り、
少しがっかりすることになります。
近くにいた、別のミュージシャンたちも、
おや?という顔をしています。
理由は簡単です。
彼女は、とにかくピッチが悪かったのです。
ストレートにメロディを歌っていても、
全般にわたり、なんとなく音が当たっていない。
アドリブは、ラインが全く見えません。
きっとこんな感じで歌いたいんだろうな・・・というのはわかる。
しかし、楽器に対して、
音が気持ちいいところにいないのです。
だから声の抜けも悪い。
ビートの輪郭も見えない。
アマチュアなら、すごいね、立派だね、となる歌ですが、
「プロ」を語ってしまったら、残念ながら、それではダメです。
もしかしたら、彼女の場合は、
日頃、全然違うスタイルの歌でお仕事をしているのかもしれません。
もしかしたら、たまたまその日、
PAが悪かったとか、泥酔していたとか、
そういうことかもしれません。
そして、もちろん、
ピッチがところどころ当たってなかったとか、
ミストーンがあったとか、ということは、
どんなプレイヤーにもあることです。
しかし、しかし、
それでも、
「ピッチが悪い」は、
やっぱり、ダメなんです。
チューニングの悪いギターで演奏するのとおなじ。
本来、ピッチが悪いとシロウトさんが聞いても、
「なんとなくぱっとしない歌ね」となりますが、
彼女の場合、主にアドリブだったので、
一般の方は気づかなかったのかもしれません。
「ピッチ」というのは、非常に微妙なものです。
日頃ピッチの正確な人でも、
体調や音響によって、どうも今日はピッチがよくない、
という日もあります。
ソロで歌っているときは気づかなかったけど、
デュエットしてみたら、お互いのピッチの微妙なブレに気づいた、
ということもあります。
そんな、数ヘルツの、微妙なピッチに敏感になること。
「当たっている」という感覚を、
カラダレベルで自分自身に覚え込ませること。
プロフェッショナルの「ピッチ」はそういうものです。
一聴して、「一個もちゃんと当たってない」という人、
人にはよく「ピッチが。。。」と言われるけど、
「自分自身で当たっていないことに気づけない」という人、
先ほどの女性に限りません。
残念ながらヴォーカリストには実に多いものです。
まずは、胸に手をあてて、
じっくり自分の歌を聴いてみましょう。
ピッチ問題だけは、
絶対に後回しにしないで、
今日から、今から、取り組みましょうね。
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