ヴォーカリストだって、もっと「音色」にこだわる!
「ロックは出音とグルーヴ、ステージプレゼンス」
と繰り返し書いてきました。
筆頭に「出音」と言っているのは、
テクニックより、表現より、
「まずは音色なんだよなぁ」と、日々痛感するから。
これは、ロックに限らず、どんな音楽だって同じでしょう。
音楽は時間芸術。
聞き手にある一定時間以上の時間、お付き合いしてもらえないと、
そのよさや意味を伝えることができないアートです。
しかし音は違います。
バキ〜ンと弾き出すその一瞬で、
“Yeaaaaaaaaa”という一声で、
オーディエンスの心を捕らえることができる。
音というのは、人の本能に訴える、
非常にパワフルなものです。
楽器にせよ、歌にせよ、
音色の重要性に気付けるか、否かで、
パフォーマンスの精度や評判は大きく変わります。
スーパープロフェッショナルたちは、
この辺に対するこだわりが、本当にすごいもの。
ギターリストたちが次から次へとギターを取っ替え引っ替えするのは、
コレクションとして嬉しいとか、
衣装替え感覚でいろんなギター持つと楽しいとか、
ギターのうんちくを語り倒したいとかいうことではなく、
(いや、そういう理由も多分にあるにせよ)
何年のあのアンプ、どこそこのこのアンプとこだわるのも、
果ては、真空管だの弦だのシールドだのと、
興味のない人にとっては全く意味不明なディテールにこだわるのも、
エフェクターを繋いでははずし、
ギターを調整しては、またギターテックを呼びと、
繰り返し繰り返し調整を試みるのも、
ぜ〜んぶ、出音にこだわるからこそ。
(と、言いきかせられている)
ところが、ヴォーカリストの多くが、
「自分の声って、こんなものだから仕方がないよね」と、
あきらめちゃっているようなところがある。
いや、あきらめているというより、
決めつけている、という方が正しいでしょう。
だから、声の研究をしないんですね。
音色を追求しない。
高い声や太い声の出し方、
英語の発音やリズムやメリスマや、
なんならハスキーヴォイスの出し方などには、
もの凄く時間を割くのに、
肝心の「声の音色」に関しては、
本当に無頓着な人が多いのです。
「いい声」と言われる人は、そこに甘んじる。
「悪声」と言われる人は、運命とあきらめる。
その中間の、どっちつかずの人は、こんなもんだよと納得する。
それじゃ、たまたま手に取ったギターを買って帰って、
「あたりだった」「はずれでした」でおしまい、
というのと変わりません。
声だって、変わります。
理想の声という明確なイメージを描いて、
さまざまなくふうと試行錯誤を重ねて、惜しみなく時間をかけて。
そうやって自分の理想の声をつくっていく。
どんな楽器だって同じなんです。
もっともっと、「音色」にこだわる。
現状打破には、それしかありません。

■無料メルマガ『声出していこうっ』。プライベートなお話からマニアックなお話まで、ポップな感じで綴っていきます!(ほぼ)毎週月曜発行!バックナンバーも読めますよ。
関連記事
-
-
中途半端なメソッドで教えない。学ばない。
メソッドには3種類あります。 ひとつは教え手自身が、複数の学校で、または専門家か …
-
-
リズムをカラダで感じるための初歩練習~Singer’s Tips#28~
音楽にあわせて足踏みをする。 手を叩く。 小さなこどもが音楽教室に入って、 一番 …
-
-
楽しくやるから、いい仕事ができる。
ニューヨーク時代、日々の生活で最も気になったのは、 巷で働く人たちのやる気のない …
-
-
60デシベルの勇気
先日、読んでいた本で、 「どんな物質も、意識のないところには存在しない。」 とい …
-
-
本当の声。好きな声。売れる声。
私、「自分の本当の声」がわからなくなっちゃって・・・。 私の「本当の声」って、ど …
-
-
練習場所が欲しい!
最近の高校生は、学校でバンド練習とかするのでしょうか。 高校時代、授業が終わると …
-
-
「ライブの時、自分の声が全然聞こえないんですけど・・・」
「MISUMIさ〜ん。ライブの時、自分の声が全然聞こえなくて、 音痴だ、がなって …
-
-
誰もが自由に発信できる世の中では、 「プロフェッショナルな送り手」は不要なのか?
インターネットのおかげで、 個人が自身のコンテンツを自由自在に 広められる時代が …
-
-
目一杯のインプット&勝負をかけてのアウトプット
どんな人にも、 スキルを上げるべく、目一杯インプットしたり、 勝負をかけて、アウ …
-
-
「これ、誰がOK出したの?」
仕事柄、たくさんのアーティストや、その卵たちから、 自主制作音源や、インディーズ …
- PREV
- 「なんか好きじゃない曲」を歌わなくちゃいけない時のヒント
- NEXT
- ROCK、来てます?
