「ツボ」をはずした練習は、単なる自己満足であり、時間の無駄。
実は私、とっても足が遅いのです。
いきなり、しかもB面で何を言い出すの〜?と思った方、
追々、この突然の告白の意図がわかっていただけると思いますので、
しばし、お付き合いください。
どのくらい遅いかというと・・・
とにかく、旗の下というものに座ったことがない。
テープを切ったこともない。
運動会は、いっつも参加賞。
こんな、アグレッシブな、
どちらかというと目立ちたいタイプの性格でいながら、
この、笑えるほどの足の遅さは、
こどもの頃からのコンプレックスであり、
悩みの種でした。
中学3年の時のこと。
英会話部の部長をやっていた私は、
その目立つ役回りからか、今と変わらぬ熱い語りのせいか、
いつも後輩たちの視線を浴びていました。
体育祭の1ヶ月ほど前。その恐ろしい出来事は起こります。
「MISUMI先輩、部対抗リレー、ぜひ、出てください!」
誰かがいきなり言い出しました。
部対抗リレーは、文化部、運動部が入り交じって、
代表者が足を競い合う、体育祭でもひときわ盛り上がる競技でした。
当然、私は、「絶対無理!あたし、足遅いから」
と言うのですが、
彼女たちの頭の中には、
MISUMI先輩はなんでもできる=足が遅いはずがない=謙遜している
という恐ろしい図式がある。
「とにかく、他の子たちが運動部の子たちに負けないくらい、
ものすごく速いですから、MISUMI先輩は心配しないで、走ってくだされば大丈夫です。」
結局、再三の抵抗も空しく、そのレースに出ることになってしまったのです。
さて、話の本題はここからです。
後輩に注目される存在でありながら、
無様な走り姿をさらすのだけは、誰がなんと言っても避けたかった私は、
その日から、毎夜、秘密特訓をすることしました。
それは・・・スクワット。。。
毎晩、ベッドに入る前に100回近く。
最初の頃は腿が筋肉痛になりました。
「これで、きっと、いつもよりは速く走れるはず!」と信じて、
ものすごい努力をしている気になっていました。
さて、陸上などをやっていた方ならわかると思いますが、
極端に足の遅い人が、スクワットなんかやっても、
そう簡単に足が早くなるはずはありません。
スクワットが有効なのは、ある程度走れる人。
普段、ほとんど運動もしていない私がやるべきだったのは、
走るフォームの修正や、ジャンプ、ダッシュなどの練習でしょう。
(こちらは専門ではないので、あくまでも予測ですが)
結局、リレーの結果は惨憺たるものでした。
英会話部は文化部ではトップ、
しかも名だたる運動部の選手たちに混じって、
私の手前まで、3位の座をキープしていました。
バトンを渡された私は、
見事に1人、2人とごぼう抜きされ・・・
結局、5位から6位転落直前で、次の子にバトンを渡すことになりました。
あの時の、後輩たちの、がっかりしたような、呆れたような顔。
何十年も経った今も、なんだか忘れられません。
「ツボ」をはずした練習は、単なる自己満足であり、時間の無駄です。
やみくもに努力する前に・・・
1.「今、これができないのは、なぜか?」という徹底した自己分析。
2. その原因をひとつひとつ取り除くための、トレーニング法の研究。
3. そのトレーニングが効果を上げているかどうかの、継続したフィードバック。
というように、頭をつかって考えることがとっても大切なのです。
限りある時間を、最大限に活用して、最大の効果を得たいものですね。
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