大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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プライベートか?グループレッスンか?

      2016/10/27

「歌はプライベートレッスンでなければ上達しない。」

長年、そう言われています。

 

理由は・・・

人間のカラダには個人差がある。

身につけた発声のクセは、人それぞれ違う。

音域も人それぞれ違う。

音楽の種類は多様だから、
一概にどんな発声がいいかとは言い切れない・・・などなど、

 

どれももちろん一理も二理もあることばかりです。

教わる側とすれば、
自分の悪いところだけを的確に指摘してもらい、
それを正すためのアドバイスを、わかるまで教えてもらえるわけですから、
問題解決も早く、レッスン後のすっきり感もあります。

 

そうしたプライベートレッスンに慣れた人にとって、
グループレッスンで、
自分とは無関係の、他の人へのアドバイスに割かれる時間は、
なんだか無駄に感じられるでしょう。

また、他の人よりレベルが高いと自負している人ほど、
基本的なところで躓いている人のためにレッスンが前に進まないことに、
少なからずいらだちを覚えたりするものです。

 

しかしです。

私自身は、プライベートレッスンのカウンセリングに来た方に、
スクールやグループレッスンをやっている他のお教室に行ってはどうかと、
勧めることがときどきあります。

 

営業的には、うちでレッスンを受けていただいた方が、いいに決まっているのですが・・・そういう価値観は、私の中にはありませんので(^^)

 

辞書に例えるなら、プライベートレッスンは電子辞書。
グループレッスンは昔ながらの紙の辞書。

 

瞬時に、ダイレクトに、答えが見つかる電子辞書に対し、
ページをぺらぺらとめくることで、
思いもかけない情報がバンバン飛び込んでくるのが紙の辞書のよさです。

 

狙いをつけた情報だけを受け取ることができるのは、
スピード勝負の時は非常に大きなメリットです。

そういう意味でプライベートレッスンは、すぐに結果を出さなくてはいけないアーティストには最適のレッスン形態といえます。

 

しかし、まだまだこれから歌や音楽を学んでいこうという人たちにとって、
狙いをつけた情報だけが、自分が得るべき答えとは限りません。

 

「正解」は、狙った単語の前後にあるかもしれない。

誰かがインストラクターに質問したことが、自分の概念を覆すかもしれない。

グループの他の人の抱えている問題や、
導き出した「正解」が、どきんとするほど、自分の胸に響くかもしれない。

 

ひとつのことに取り組む仲間がいることで、
レッスンの意味が何倍にも深まることさえあります。

無駄な情報など、なにひとつないのです。

 

 

いかがでしょう?

プライベートレッスンも、グループレッスンも、
それぞれの特徴、よさがあります。

最初から形態にこだわらず、
気になるレッスンにはまず飛び込んでみるのがいいのではないでしょうか。

 

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 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Comment

  1. TAKA より:

    有名なシンガーが卒業したと宣伝しているヴォーカルスクールに体験レッスンに行ったことがあります。生徒扱いで参加させてもらって、計3人でのレッスンとなりました。

    他の二人は20歳前後と思われるおにーちゃん。
    一人は「何しに来ているのかわからない」印象。もう一人は、自分の憧れのシンガーのマネをしようとしているようで、先生がくれるアドバイスが耳に入っていない様子。

    自分が受けたレッスン~アドバイスより面白くて勉強になったのが、そんな二人のレッスンの観察でした。

    いろんな視点から観察していると、ダメなものがなぜダメなのかがわかる。先生の指導を、表面的な言葉ではなく、言わんとすることの本質がどういうものであるかと考えながら聞いていると、自分に対するレッスンでは学べなかったであろうことが学べる。

    個人レッスンも、グループレッスンも、その限られた時間が有意義になものになるかどうかは、学び方のセンスとか感性が大きいですね。

    もっと言えば、ヴォーカルスクールは、そういう「何しに来てるんだろう?」と思ってしまうような生徒達がたくさんいるから経営が成り立っているのでしょう。そういう生徒達がいなかったら、自分のレッスン料はもっと高額になるはず・・・・・そう考えると、真剣に学ぼうという人は、そういう人達のことを馬鹿にするのではなく、感謝してもいいのかも?

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