ことばにするチカラ
「天才は教えるのが下手」と言われます。
だって、普通にできるから、
どうしてそれができるのか、考えたこともない。
食べ物を味わうように、
音楽を自然に味わって、
材料や調味料が手に取るようにわかって、
それを当たり前のように再現できるから、
「これ、どんな味ですか?」
「どうやると、それがわかるんですか?」
「再現するにはどうしたらいいんですか?」
なんて、質問されると、
どう答えたらいいか、答えがみつからない。
「なんでわかんないのかな〜」となる。
実は天才じゃなくっても、
言語化することが下手な先生はたくさんいます。
「私の歌を聴けばわかるでしょ?」
「どうしてわかんないのかな?」
「なんでできないのかな?」・・・etc.
人の歌を聞くだけで充分な情報が拾えるくらいなら、
わざわざレッスンプロにお金払わなくたって、
プロの素晴らしい歌を聴いて、
どんどん上達できるでしょ。
わからないから、答えが欲しいんです。
「なんで、わかんないのかな?」って、
わからないのは、教え方が悪いからです。
できないのは、できるように教えられないからです。
生徒のせいじゃない。
教える側の問題です。
「僕は天才ではありません。なぜかというと自分がどうしてヒットを打てるかを説明できるからです。」
イチロー選手のことばです。
イチローが天才じゃないなら、
天才プレイヤーなんて存在しないでしょう。
世の中には、言語で理解するタイプと、
感覚で理解するタイプがいる。
こんなことばが出てくるということは、
イチローは、おそらくは、言語派だから。
つまり、どんな天才にだって、
言語能力やコミュニケーションスキルの高い人はいるということ。
言語で伝えられないのは、教える側の怠慢なのです。
音楽のように、正解を個々の感覚に依存するものを
言語化して教えるには、
それなりの覚悟と努力、修行が必要です。
抽象的になりすぎれば、伝わらない。
専門的になりすぎれば、
これまた、何を言っているのかさっぱりわからない。
小難しく、偉そうになれば、聞く気もおきない。
聞く側の目線に立って、
それぞれの理解度に応じた説明を、
わかりやすく、
頭に入りやすいように、
興味深く、魅力的に、
時にユーモアを交えておもしろおかしく伝える。
音楽を教える人間たるもの、
音楽を深く知り、
その道で認められる人であることはもちろん、
人にものを教える人間としても、
プロフェッショナルであるべし。
そのどちらが欠けても、いかんのだと。
だから、日々、どんなに努力をしても、
自分を磨き続けても、し過ぎることはないのだと、
インストラクターたちに、有言、無言で伝えながら、
自らを戒める日々です。
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