『キミは歌わないで口パクしていなさい』
世の中には、人を指導する立場でありながら、
あるまじき事を言ってしまう人というのが、
一定の割合で存在するようです。
「中学校の頃、合唱指導の先生に、
『キミは歌わないで口パクしていなさい』と言われた。」
初めて聞いたときは、「なんじゃそりゃ〜!?」と、
思いきり激怒したものですが、
やがて一般の人にヴォイトレをする機会が多くなって、
実は、そんな体験を持つ人が意外なほど多いことを知りました。
学校対抗でその喉を競い合う合唱コンクール。
指導の先生の腕が試される、大舞台であることは間違いありません。
合唱の中に音程が取れない子や、
いい声が出せない子、
変声期の子などが混じれば、サウンドはそれだけ乱れる。
サウンドが乱れれば、成績が落ちる。
賞を取るのも難しくなる。
だから、キミとキミとキミは声を出さないでいてね、
ということらしい。
成績が落ちれば、上の先生や父兄の方々から、
文句が出ることもあるでしょう。
一所懸命やっている子たちに賞を取らせてあげたい、
という気持ちもあるでしょう。
もしかしたら、ご自身の立場上、
そうせざるを得ないという人もいるかもしれません。
それでも、です。
不真面目に歌っていたり、
悪ふざけたりするような子に、
「お前は声出さんでよろしい!」と言うならまだしも、
一所懸命歌っている子がうまく歌えないとしたら、
それは指導者の責任ではないのか?
言われた側がおとなになっても、
トラウマと感じているくらいですから、
みんなの前で、よほどの言われ方をしたり、
よほど寂しい、悔しい思いをしたりしたのではないか。
うまく歌えるように指導する、
うまく歌えるパートをつくるなど、
指導サイドの工夫次第で、
もっともっとできることはあったのではないか?
変声期の子なら、
「無理な声」に聞こえない発声や、
歌い方を教えてあげることはできなかったのか?
百歩譲って、
もしも、歌わせられない事情があるなら、
(そんな事情があるとして、ですが)
言われた側が納得できる、
可能な限りコンプレックスを残さない言い方があったのではないか?
合唱部などのコンクールならともかく、
全校で(もしくは特定の学年が)参加する合唱コンクールは、
合唱を通じて学生の「音楽を楽しむ心」を育むとともに、
互いに競い合い、助け合いながら、
「音楽への向上心」に磨きをかけるためのもの、と理解しています。
それこそが、コンクールのゴール。
成績を残すことそのものより、大切なことなのではないか。
夏休みを前に、役者さんのワークショップや、
アーティストのグループレッスンなどの機会が増えています。
常に「今、大切なことはなにか。」を念頭に、
心して指導に当たらねば。
指導するものの責任は、いつだって、重いのです。
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