大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「向いてない」んじゃない、「イケてない」んだ。

   

「お前、無理してそんな歌、歌うなよ。
お前には似合わないぞ。」

「MISUMIちゃん、違うよ〜。ああいうの。」

 

よく語ることですが、
若い頃から本当にたくさんの人に
いろんなご意見をいただいてきました。

何を歌っても、「なんか」言われる。

「もっとソフトなの歌え」
「お前はジャズとかのがいいぞ」
「MISUMIさん、やっぱ、R&Bでしょ」
「うーん。黒っぽくないからねー。声がね」
「日本人のくせに、なんでそんな洋楽ばっかりやってるの?」
「英語じゃ売れないよ。日本語で歌詞書けよ」
「MISUMIちゃん、日本語で歌うと、ほんっとに普通になっちゃうねー」
・・・etc.etc….

まぁ、みなさんご好意で言って下さっているわけですが、
セルフイメージが低いときに言われる、
こういうことばは、実に重い。

で、なにがイケてないって、
そんな言葉をいちいちぜんぶ真に受けて、
やってたことに自信をなくして、
「どうすりゃいいのよ!?」と、
ウジウジ悩んでは、
また違う事に手を染めたりする自分自身なんですよね。

 

ある音楽に「声が合わない」と言われる。

そんなんで、その音楽をあきらめられるんなら、
それこそが「向いてない」わけだから、
さっさとやめた方がいい。

「声が合わない」ってことは、
これまで前例がないってことで、
そこにビジネスチャンスを感じるくらいしたたかじゃないと、
結局うまくいかないわけです。

 

メタルを歌うアイドルとか、
ラップを歌う白人とか、
ジャズを歌うボーカロイドとか、
・・・例を挙げればきりがないけど、

エポックメイキングな何かって、
「違和感」の先にあるはず。

 

だから私は、生徒たちに、
「向いてない」ということばは基本、言いません。

反対に「これ、向いてますか?」と聞かれたら、
「歌いたいんでしょ?だったら向いてるのよ。」と、
言っています。

 

「歌いたいのは歌えるから。」
それが私の信念です。

それは、けして優しい言葉ではありません。

「歌いたいなら、モノにできるまで練習しなさい」という、
まぁ、実はめちゃくちゃ厳しいことばでもあります。

 

「向いてないんじゃない?」と言われるのは、
それが、「イケてない」から。

でもね。
何かを歌って「イケてない」なら、
別の曲を歌っても、
別のジャンルを歌っても、
やっぱり「イケてない」。

だから、みんな「なんか」言うんですね。

 

人に「なんか」言われたとき、すべきことは、
「これって向いてないのか」と悩むことではない。

今の自分自身の歌を
ちゃんとジャッジできていない、
その甘さに、目を向けることなのです。

何を歌っても、イケてる人は、やっぱりイケている。

そんな「歌の本質」を捕まえる力こそが、
歌い手にもっとも大切な力とも言えますね。

修行です。

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