「向いてない」んじゃない、「イケてない」んだ。
「お前、無理してそんな歌、歌うなよ。
お前には似合わないぞ。」
「MISUMIちゃん、違うよ〜。ああいうの。」
よく語ることですが、
若い頃から本当にたくさんの人に
いろんなご意見をいただいてきました。
何を歌っても、「なんか」言われる。
「もっとソフトなの歌え」
「お前はジャズとかのがいいぞ」
「MISUMIさん、やっぱ、R&Bでしょ」
「うーん。黒っぽくないからねー。声がね」
「日本人のくせに、なんでそんな洋楽ばっかりやってるの?」
「英語じゃ売れないよ。日本語で歌詞書けよ」
「MISUMIちゃん、日本語で歌うと、ほんっとに普通になっちゃうねー」
・・・etc.etc….
まぁ、みなさんご好意で言って下さっているわけですが、
セルフイメージが低いときに言われる、
こういうことばは、実に重い。
で、なにがイケてないって、
そんな言葉をいちいちぜんぶ真に受けて、
やってたことに自信をなくして、
「どうすりゃいいのよ!?」と、
ウジウジ悩んでは、
また違う事に手を染めたりする自分自身なんですよね。
ある音楽に「声が合わない」と言われる。
そんなんで、その音楽をあきらめられるんなら、
それこそが「向いてない」わけだから、
さっさとやめた方がいい。
「声が合わない」ってことは、
これまで前例がないってことで、
そこにビジネスチャンスを感じるくらいしたたかじゃないと、
結局うまくいかないわけです。
メタルを歌うアイドルとか、
ラップを歌う白人とか、
ジャズを歌うボーカロイドとか、
・・・例を挙げればきりがないけど、
エポックメイキングな何かって、
「違和感」の先にあるはず。
だから私は、生徒たちに、
「向いてない」ということばは基本、言いません。
反対に「これ、向いてますか?」と聞かれたら、
「歌いたいんでしょ?だったら向いてるのよ。」と、
言っています。
「歌いたいのは歌えるから。」
それが私の信念です。
それは、けして優しい言葉ではありません。
「歌いたいなら、モノにできるまで練習しなさい」という、
まぁ、実はめちゃくちゃ厳しいことばでもあります。
「向いてないんじゃない?」と言われるのは、
それが、「イケてない」から。
でもね。
何かを歌って「イケてない」なら、
別の曲を歌っても、
別のジャンルを歌っても、
やっぱり「イケてない」。
だから、みんな「なんか」言うんですね。
人に「なんか」言われたとき、すべきことは、
「これって向いてないのか」と悩むことではない。
今の自分自身の歌を
ちゃんとジャッジできていない、
その甘さに、目を向けることなのです。
何を歌っても、イケてる人は、やっぱりイケている。
そんな「歌の本質」を捕まえる力こそが、
歌い手にもっとも大切な力とも言えますね。
修行です。
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