大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「伝える力」と「届ける力」

      2022/07/31

2007年に起業セミナーというものにはじめて参加してから、
出版関係のセミナー、デザインセミナー、ウェブセミナーなどなど、
「あんたの仕事、なんや?」と言われそうなくらい、
さまざまな講座に参加してきました。

そのたびに、
世の中には、本当に優秀な人、賢い人、ビジネスセンスのある人があふれていて、
そんな彼らのおかげで、日本という国がまわり、
音楽はじめ、さまざまな文化が育っていくのだなと、
感謝したり、感心したり。

一方で、ビジネスのセンスやスキルがあるということと、
売りたいもの、伝えたいこと、表現すべきことを持っているということは、
まったく違うことなのだということも、あらためて思い知りました。

 

はじめて起業塾に通った時のこと。
「みなさんは、世の中の人が求めているものが何かを見極めて、
商材を見付けるべきです」。
講師の先生が、こんなことを言うのです。

誇張ではなく、びっくりしました。
「この人、一体何を言ってるんだろう?
売りたいものがないのに、ビジネスしたい人なんかいるの!?」

コンテンツ(語るべきストーリー、売るべきモノ)を持っているということと、
ボキャブラリーや文章力、売るスキルを持っているということは、全然別ものなのだ。
そう腑に落ちるまで、しばらく時間を要しました。

全部同じ。

歌いたい思いや、表現したい感情、伝えたいストーリーがあって、
歌をつくるスキルを磨く、歌う技術を磨くから、
はじめて、そのストーリーを形として、人に届けることができる。

しかし、音楽の世界にいると、
この「伝えたいストーリー」がある→「それを伝える技術を磨く」を、
無限ループで繰り返してしまいがち。

肝心の「伝える」相手が見えてこなかったり、
いいものさえつくれば、
みんなきっと買いに来てくれると、甘い空想にひたったりして、
時間を無駄にしてしまうことが多々あります。

売るべきモノがないとビジネスは成り立ちませんが、
どれだけいいものをつくっても、
お店に並べないことには、買い手は現れません。

 

語るべきストーリーを持つ。
ストーリーを過不足なく語れるスキルを磨く。
伝えるべき人に、きちんと届ける。

この3つがバランスよくできて、
はじめて、「ストーリー」自体に価値が生まれるのですね。

誰に届けるか。
どうやって届けるか。

相手の顔が見えるから、確かなことばを選べる。
もっともっと語りたいストーリーがあふれてくる。
届ける方法も見えてくる。

飽くなき修行は続きます。

 

————-

◆歌う心とカラダに活を入れる2日間。MTLサマースクール2022
リアルとリモート同時開催。
◆公式LINE、はじめました。ご質問やお悩みにもお答えしていきます。
ご登録はこちらから。

 - B面Blog, クリエイト, 夢を叶える

  関連記事

好きであることは自分への責任であり、義務である。

「好きなことをみつけて、それを一所懸命やれよ。 好きなことのない人生はつまんねー …

「対バン」の流儀

「対バン」。 学生時代からあまりに当たり前につかっていることばなので、 この言葉 …

バンドやりたい。

若者の頃に出会ったメンバーと、 生涯バンドを続けて行く。 これって、初恋の恋人と …

「で?いくら稼ぎたいの?」

「で?MISUMIさんは、いくら稼ぎたいの?」 不躾に、こんな質問をされたことが …

なんだってやってやる!?

学生時代からさまざまな現場で引っぱりだこになったり、 早々にデビューして周囲にち …

「すごいヤツ」は行動する。

「シンガーソングライターとして世の中に出ていきたいなら、 今どき、自分の録音環境 …

「ストリートミュージシャン」というお仕事

欧米では、 街角や地下鉄の通路などで、 音楽を演奏するミュージシャンに、 しばし …

「いい仲間」いますか?

近年の私しか知らない人には全く信じてもらえないようですが、 かつての私の自信のな …

「型」か?没個性か?

日本の幼稚園の先生たちは、 「さぁ、みんなでブランコに乗りましょう。」 「次はお …

「もっとうまくなってから」と言う『完璧主義のぐず』

バンド、どうして組まないの? 「もうちょっと、うまくなってからメンバー探そうと思 …