大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌の構成要素を分解する〜ラララで歌う〜

      2015/12/20

大好きな曲を、オリジナルを歌っている歌手と一緒に歌う。
何度も、何度も、繰り返し、一所懸命歌う。

これを練習と思っている初心者がたくさんいるのですが、
これだけで劇的に上達するのは、よほどのセンスがあるか、
すでに、かなり音楽がわかっている人でない限り無理です。

例えば、絢香やYUIやAIが、テイラー・スウィフトやリアーナが、
自分がうまく歌えていない部分をきちんと埋めてくれる。
出ないところはきちんと出してくれるし、
音程が怪しいところもばっちり補正してくれます。

彼女たちの豊かな声と表現力が、
自分の平坦な歌もダイナミックに味付けしてくれますし、
声量の足りないところには声量を、
表現の足りないところには表現を加えてくれます。

気分よく歌えて当然です。

もちろん、高い声が出ないとか、息が続かないとか、
自分でも、気がつかないわけではないと思います。
しかし、それだけでは、情報量が全く足りません。
これでは上達しないんです。

では、練習はどのようにしたらいいでしょう?

歌は、メロディ、歌詞、リズム、ダイナミクスなどなど、
たくさんの部品によって構成され、
うまい歌手ほど、そのひとつひとつに、驚くほどの情報量が含まれています。

まるっと「歌」として練習しても、
その、ひとつひとつの精度が上がらない限り、けして歌のグレードはあがりません。

まずは、ひとつひとつを徹底的にチェックし、
その精度を上げることが、歌の練習のスタートになります。

一番最初に点検すべきなのは、やはり、メロディラインでしょう。

メロディのチェックには、鍵盤楽器をつかいます。
可能なら、メロディー譜を用意して、鍵盤で一音一音弾きながら、
音のひとつひとつを細かくチェックしていきます。

実は、この、「一音一音のチェック」、
自分で曲を書くシンガーソングライターでも、
ちゃんとできてない人がいっぱいいるんです。

歌えているつもり、音が取れているつもり、がくせ者です。
軽く音痴になっている人や、鍵盤にない音を知らん顔して歌っている人、
勝手に作曲してしまう人などなど、
メロディラインをわからずに歌っている人がどれだけ多いことか。

音源通り、鍵盤にある音を、鍵盤にチューニングをあわせて歌えるようになることが、
スタートライン。
そのためには、「ラララ」で、ゆっくりと練習するのが一番です。

ラララで歌うときに、大切なことは。。。

1. メロディラインを一音ずつ、しっかりと確認すること。
2.ずり上げたり、ずり下げたりせず、音の階段をくっきり歌うこと。
ときにはチューニングメーターをつかって、的確にピッチを調整すること。
3.まずはボイトレと思って、一音一音の声のクオリティ、音量をしっかり整え、
いい声で歌うこと。
4.すべての音がくっきり歌えるテンポで練習すること。
5.自分のラララを録音し、さらに鍵盤で確認してみること。

オリジナルの歌手たちの声の助けをかりず、
テンポを下げて、ゆっくりと、ラララで歌われる歌は、
服もお化粧もすっかり取り去った、生まれたまんまのカラダと同じ。

目をそらさずに、こんなとこや、あんなとこを、
しっかり、くまなく点検して、シェイプアップに励みましょう。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

迷う余地なく行動できるよう自分を追い込む

あれは中学生くらいのことだったでしょうか?   新しい学年がはじまると …

どうして私はがんばれない?

「なんか、最近、がんばれないんですよ〜。   がんばらなきゃいけないの …

批評家目線を捨てる

「Aさんって、うまいんですか?」 生徒の口からは、いわゆる本格派といわれる歌手で …

「長期記憶のゴールデンタイム」にあなたは何を記憶しますか?

「受験生といえば、まずは『でる単』」。 『でる単』、すなわち、『試験に出る英単語 …

ちゃんと「聴く」!

さて、音源を買ったら、次にすることは当然「聴く」。   この「聴く」が …

伸び悩んだらやるべき3つのこと

長い音楽人生。 「伸び悩む時期」は何度も訪れます。 技術の伸び悩み。 キャリアの …

何年「基礎練習」するよりも、1回の「本番」

何年「基礎練習」をするよりも、一回の「本番」がパフォーマーを上達させる。 &nb …

記憶に残る「デキるやつら」は一体何が違ったのか?

かつて、教えていた音楽学校では、ヴォーカルの授業を 定期的にインスト科の生徒たち …

練習環境を整えることこそ、練習の最重要課題!

先日、毎月ヴォイトレを担当している、 某事務所の若手声優たちのワークショップを …

「好きになれない課題曲」から徹底的に学ぶ方法

自分が心から感動し、お手本にし、研究した、いい音楽を、後進にシェアしたい。 &n …