大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

音楽家としての「表現の自由」を謳歌する

   

「テクニックを身につけるのは、選択の余地を増やすためである」
そんなお話をよくします。

選択の余地があるということは、自由であるということです。

 

音楽家として、ヴォーカリストとして、表現の自由を謳歌する。
テクニックはそのパスポートのようなものと言っていいかも知れません。

 

例えば、です。

ここのフレーズは、パキーンと高音を出したい。
もしくは、深〜い低音にビブラートをかけて、
聞く人の心を揺さぶりたい。

そんな風に音のイメージを描いても、
自分自身の音域に制限があれば、
裏声にせざるを得なかったり、

カスカスの声で、
低音を出している「ふり」をしなくてはならなかったり。

 

言葉をたたみかけるように、
攻撃的に歌いたいと思っても、
カツゼツがイマイチだったり、
ピッチが当たらなかったりすれば、
もこもこした、聞く人が気持ちの悪い歌になってしまうでしょう。

 

「ラストはが〜っとクレッシェンドして、
思いっきりオーディエンスの心を揺さぶりたい!」と思っても、
肝心の声量がそこまで届かず、
ショボい、尻切れトンボな終わりになってしまったり、

「声にディトーションをかけて、ロックっぽく歌いたい!」と思っても、
スカスカ&ガラガラの音程のない声になって、
仕舞いにはノドを壊してしまったり。

これでは「表現の自由」があるとは言えません。

 

何をしてもいい。
何だってできる。
さあ、何をしようか?

そんな状態にいることを「自由」であるとするなら、

表現に制限がある状態は、
がんじがらめにされて、
檻の中に閉じ込められている状態。

あれをしちゃだめ。
これもできない。

・・・そうやって、
自分の置かれた状況に絶望して、諦めてしまえば、
自由は一生手に入りません。

 

人類の長い歴史を見てもわかるように、
自由を手に入れる道のりは、
けしてたやすいものではありません。

自分には自由になる権利があると信じて、
戦い続けた人たちにしか、
自由は訪れません。

 

無理と決めつけてしまえば、
どんな可能性も開けません。

人は「絶対に無理」とわかっていることに対して、
努力はできないからです。

どんなにがんばっても、
絶対にできないことに費やす時間は無駄です。

それなら楽して、楽しく過ごして、
自分にとって無理な領域は見てみない「ふり」をしている方がいい・・・

 

そんな風に思ってしまうときこそ、
自分の胸に手を置いて、
もう一度じっくり考えてみるべきときです。

それは、本当に100%無理なことなのか?

自分が無知なゆえに、そう思い込んでしまっているだけなのではないのか?

無理と決めつければ、自分が傷つかないからと、逃げているだけではないのか?

努力すれば、いつかできると認めてしまえば、
これから立ち向かうべき壁が見えてしまう。
その壁に最初からひるんで、腰が引けているだけなのではないのか?

無理と決めつけるのは、自分が怠惰だからではないのか?

 

「どんなことでも100%可能である」という観点から考える。

そんな習慣を持つ人こそが、表現の自由を、
人生の自由を手に入れられるのではないでしょうか?

◆毎朝お届けしているMISUMIの書き下ろしメルマガ【メルマガ365】。
今日から、「100回歌っても同じ音が出せるようになるためのtipsシリーズ」がはじまりました。バックナンバーも読めますので是非。
ご登録はこちらから。

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

  関連記事

自己表現のための”自分アバター化作戦”

かつて、ハワイ出身の日系アメリカ人女性シンガーに、 英詞の提供をしたことがありま …

「この歌、いいなぁ」には必ず理由がある!

「売れる曲には、必ず理由がある」 あるヒットメーカーが教えてくれたことばです。 …

「おまえ、リズム悪いな」と言われたら、やるべき3つのこと。

「おまえ、リズム悪いな」 何気なく、 しかし、わりとよく言われるこのことば。 楽 …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …

「迷い」に耳を貸さない覚悟

「これだ!」と閃いて、 ワクワクはじめたはずなのに、 なぜかうまくいかない、 こ …

歌の練習で絶対にはずせない3つのポイント

連日、ご好評をいただいてます、『デモをつくろうシリーズ』。 今日は6回目です。 …

no image
「リズム感がない」なんてことばをつかわない!

レッスンの話をもっと書きたいと思っていても、 なんだか、生徒やクライアントさんの …

ゆっくりやってもできないことは、速くやってもダメ

そんなの当たり前でしょ?と言われそうなタイトルですが、 実は、この当たり前を知ら …

音なき音楽をキャッチする

歌や音楽を学びたい、極めたいと思うとき、 ついつい、音楽のことばかりを考え、 ま …

「Fが難しくて弾けない」って理由でギター、やめる〜?

昨日、某大手プロダクションのお偉い方との会話。   M「最近、ギター科 …