1つの曲に含まれる驚くべき情報量
2015/12/20
「普段、どんな音楽を聴いているんですか?
やっぱり、レコードとか、CDとか、たくさん聴くんですか?」
かつて、どんな曲でもカッコよく華麗にアレンジしてくれた先輩、
ギターリストのテリーさんに、そう聞いたことがあります。
「いや。そうでもないんだよね。
でもね、テレビや、こういうお店とかで流れてくる音楽をなんとなく聴いてるだけで、
すごい情報量が流れ込んでくるんだよ。」
お店のBGMをそんな風に聞いたことはなかったので、びっくりしました。
「別に聴くつもりで聴いているわけじゃないんだけど・・・」
ひとつの曲に含まれている情報量は、それだけで、ものすごいものがあります。
音の高低、長さ、休符、リズム、フレーズの流れ、強弱、音色などの情報が、
録音されている楽器や声が発している音の数だけ含まれている。
さらに、歌モノならば、言語情報もあります。
実際、音楽ソフトなどで、1曲のデータをすべて可視化すると、
その情報量の多さに圧倒されます。
エンジニア的観点から言えば、
使用マイクや、スタジオ全体の音響、
ミキシングでの音の機械的な処理などの情報もあるでしょう。
マスタリングなどの段階で調整される、
EQやコンプレッサーのかかり具合などの情報もあるかもしれません。
その音楽を再生している音響機器や、
部屋の環境、全体の音量なども、曲に乗ってくる情報といえるでしょう。
その曲が、再生されている背景には、必ず、人がいて、
さまざまな思惑や、想いがあって、
などということに想いを馳せれば、そうしたこともすべて、
その曲に含まれる情報といえるかもしれない。
たった1曲。
音楽を学ぶ力は、
その1曲に含まれている情報を、どれだけ多く拾えるかにかかっています。
情報を集められる耳を持つ人ほど、聴いても聴いても聴き足りないと焦る。
一方で、ほんの数回聴いただけでわかった気になる。
メロディを覚えただけで歌える気になるという人もいる。
それでは、差は広がる一方です。
曲が面白くないと感じるのは、
単に、フィーリングがあわないというのも、もちろんあるでしょうが、
本当に面白い、有益な情報が、
自分の耳に入ってきていない、ということなのかもしれない。
ある程度の年齢になったら、感覚だけでなにかを感じるのは無理、
というのが私の持論です。
1. 何を意識すべきかを、明確に理解する。
2. 頭を使って、聴くべきもの、ひとつひとつに意識の焦点をあてる。
3.ひとつひとつが聞こえて来たら、それらの関係性を理解できるまで聴きこむ。
そんな練習の繰り返しで、
ちまたにあふれるBGMから、大量の情報が聞きとれるようになります。
新学期がはじまり、音大でも、そろそろ課題曲が配布される時期。
「こんな曲、面白くないな」と思ったら、
まずは、そこに含まれる驚くべき情報を、くまなく聴く訓練をしてみる。
そこから大きく扉が開くかもしれません。
関連記事
-
-
目一杯のインプット&勝負をかけてのアウトプット
どんな人にも、 スキルを上げるべく、目一杯インプットしたり、 勝負をかけて、アウ …
-
-
「好きになれない課題曲」から徹底的に学ぶ方法
自分が心から感動し、お手本にし、研究した、いい音楽を、後進にシェアしたい。 &n …
-
-
「ちゃんと聴く」技術。
自分の歌って、ぶっちゃけどうですか? いきなり、そんな質問をされることが、よくあ …
-
-
「エアギター」のススメ
ギターリストになりたくて、 明けても暮れても練習していた時代があります。 今やこ …
-
-
「数値」と向き合う。「ヒト」と向き合う。
◆歌の「うまさ」は数値化できる。 専門的な機械を使えば、いや、近年ではそこそこの …
-
-
「センスが悪い」と言われる人への5つのアドバイス
今日は昨日のブログの続きとして、 テクニックはあるのに、音楽的に評価されない、 …
-
-
やっぱ、最後はエネルギー。
歌の指導をしていく中で、 心がけているのが、 感覚的な説明に終始したり、 精神論 …
-
-
条件が不利な人ほど、熱意がある
優秀なボイストレーナーのレッスンに通い、 思う存分自主練習を積み、めきめき上達す …
-
-
自分がヘタに聞こえるのは、上達してきた証拠
週1回90分レッスンに通いながら、日々コツコツと自主トレもできる人なら、 およそ …
-
-
練習の成果は「ある日突然」やってくる
はじめて「上のF」が地声で出た瞬間を、 今でも鮮明に覚えています。 学生時代は、 …

