「オケ」じゃなくて、プレイヤーの顔のついた「音」を聞くんですよ。音楽って。
年寄り自慢をするつもりは毛頭ありませんが、
(あたりまえ)
一昔前は歌を歌いたかったら、
楽器を練習して弾き語りするか、
伴奏の人を見つけるか、
バンドをやるかしか、
選択肢はありませんでした。
カラオケなんて、
おじさんがバーで演歌を歌うもので、
若者たちが好む曲や、
洋楽ロックがカラオケで唄える時代が来るなんて、
想像もつかなかった頃です。
バンドでスタジオに入って、
せ〜ので音を出すと、
まぁ、1人、2人、必ずとんちんかんな音を出す子がいて、
「え〜?お前ちゃんと練習したのかよ?」
「あ。いや。まぁ。適当に・・・。」
「俺ら青春かけてんだからさぁ。いー加減にしろよ。」
なんて、言い合ったりして。
そんな他愛もないコミュニケーションや
緊張感を楽しんだものです。
メンバーの大半がどんなにうまくても、
ひとりでも不真面目な人や、
へたくそな人が混じっていると、
音楽は成立しないことや、
反対に、たったひとりでも、
びっくりするくらいいい演奏をする人がいると、
全体のサウンドがぐっと引き上げられること、
同じ曲を同じアレンジで演奏しても、
メンバーが違うとグルーブも歌いやすさも全然違うこと、
さらには、
スタジオの音響が、
どのくらい歌や演奏に影響するか、
自分が演奏するとき、絶対聞こえていて欲しい楽器や、
反対に聞こえすぎると歌いにくい楽器、
演奏中の場面、場面で、
どの楽器がリーダーシップを取るか、
そのときプレイヤーは何を聞いて、何を気にするのか、
自分はバンドの中でどんな役割をもっているか、
などなどなど・・・。
バンドから学ぶことはあまりにもたくさんあって、
音楽というのは、取りも直さず、
コミュニケーションであるのだと、
たくさんの優れたミュージシャンや、
一緒に演奏をしてきた数え切れない友人たちの顔を思い出すたびに、
確信するのです。
さて、時は流れ。
今や「歌う」イコール「カラオケ」と考える人が圧倒的に多い、
オールドスクールの私にとっては不思議な時代です。
彼らの「オケ」には顔がない。
「オケ」は楽器ですらない。
音大のアンサンブルのレッスンでも、
楽器科の子たちが目の前で演奏しているというのに、
あたかもカラオケで歌っているかのように、
歌詞カードだけを見つめながら、
不動の姿勢で歌う子たちのなんと多いことか。
コミュニケーションの匂いのしない、
エネルギーの交流のない、
そこはかとなく無機質な音楽が、
時代のサウンドだということなのでしょうか。
人は人のエネルギーに心動かされるもの。
そんな人間という生物の本質はけして変わらないはず。
音楽を、歌を志すなら、
どうか、少しでも、
生身の人間と共に音を出すチャンスを持って欲しい。
顔の見える音を、感じて欲しい。
演奏に、呼吸や血液や汗を通わせて、
人と人との関わりを表現して欲しい。
カラオケで歌うなら、
どうかカラオケの向こうにも、
人の顔があるということを、感じながら歌って欲しい。
バンドで音楽に目覚め、
バンドに育てられ、
バンドで仕事をし続けてきた私は、
そんな風に願うのです。
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