大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「オケ」じゃなくて、プレイヤーの顔のついた「音」を聞くんですよ。音楽って。

   

年寄り自慢をするつもりは毛頭ありませんが、
(あたりまえ)
一昔前は歌を歌いたかったら、

楽器を練習して弾き語りするか、
伴奏の人を見つけるか、
バンドをやるかしか、
選択肢はありませんでした。

カラオケなんて、
おじさんがバーで演歌を歌うもので、
若者たちが好む曲や、
洋楽ロックがカラオケで唄える時代が来るなんて、
想像もつかなかった頃です。

バンドでスタジオに入って、
せ〜ので音を出すと、
まぁ、1人、2人、必ずとんちんかんな音を出す子がいて、

「え〜?お前ちゃんと練習したのかよ?」
「あ。いや。まぁ。適当に・・・。」
「俺ら青春かけてんだからさぁ。いー加減にしろよ。」
なんて、言い合ったりして。

そんな他愛もないコミュニケーションや
緊張感を楽しんだものです。

 

メンバーの大半がどんなにうまくても、
ひとりでも不真面目な人や、
へたくそな人が混じっていると、
音楽は成立しないことや、

反対に、たったひとりでも、
びっくりするくらいいい演奏をする人がいると、
全体のサウンドがぐっと引き上げられること、

同じ曲を同じアレンジで演奏しても、
メンバーが違うとグルーブも歌いやすさも全然違うこと、

さらには、
スタジオの音響が、
どのくらい歌や演奏に影響するか、

自分が演奏するとき、絶対聞こえていて欲しい楽器や、
反対に聞こえすぎると歌いにくい楽器、

演奏中の場面、場面で、
どの楽器がリーダーシップを取るか、
そのときプレイヤーは何を聞いて、何を気にするのか、

自分はバンドの中でどんな役割をもっているか、
などなどなど・・・。

バンドから学ぶことはあまりにもたくさんあって、
音楽というのは、取りも直さず、
コミュニケーションであるのだと、
たくさんの優れたミュージシャンや、
一緒に演奏をしてきた数え切れない友人たちの顔を思い出すたびに、
確信するのです。

 

さて、時は流れ。

今や「歌う」イコール「カラオケ」と考える人が圧倒的に多い、
オールドスクールの私にとっては不思議な時代です。

彼らの「オケ」には顔がない。
「オケ」は楽器ですらない。

音大のアンサンブルのレッスンでも、
楽器科の子たちが目の前で演奏しているというのに、
あたかもカラオケで歌っているかのように、
歌詞カードだけを見つめながら、
不動の姿勢で歌う子たちのなんと多いことか。

コミュニケーションの匂いのしない、
エネルギーの交流のない、
そこはかとなく無機質な音楽が、
時代のサウンドだということなのでしょうか。

人は人のエネルギーに心動かされるもの。
そんな人間という生物の本質はけして変わらないはず。

 

音楽を、歌を志すなら、
どうか、少しでも、
生身の人間と共に音を出すチャンスを持って欲しい。

顔の見える音を、感じて欲しい。

演奏に、呼吸や血液や汗を通わせて、
人と人との関わりを表現して欲しい。

カラオケで歌うなら、
どうかカラオケの向こうにも、
人の顔があるということを、感じながら歌って欲しい。

バンドで音楽に目覚め、
バンドに育てられ、
バンドで仕事をし続けてきた私は、
そんな風に願うのです。

◆一生ヴォイストレーナーのいらない自分になる。第8期MTL12、10月開講!第8期ご予約で、無料で参加できるダイジェスト版は残席わずか。
◆いつでもどこでも何度でも。最長9ヶ月間学べます。全額返金保証のオンライン講座。MTLオンライン12。

 - B面Blog, バンド!, 音楽

  関連記事

言わなくていいこと。言うべきこと。

言わなくてもいいことを、 「これはあなたのためだから」と、 上から言う人がいます …

音楽をやる理由?

自分とおなじくらい「音楽に夢中」という友達に出会えないことが、 学生時代の悩みで …

練習するのは、全てを忘れるため

「テクニックなんかどうでもいいんですよ、歌は。」 ピッチだ、リズムだ、表現力だと …

「たった5分」に情熱を傾けるのは不毛ですか?

高校時代のお話です。 文化祭前に来る日も来る日も練習に明け暮れる私に、 同級生の …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話①

MTLオンライン12というオンライン講座を作り上げ、 やっとスタートにこぎつけた …

感情も情熱も当てにならない。システムなんかじゃ、いい音楽は生まれない。

感情には波がある。 情熱もやがて冷める。   だから、何事も継続するに …

ねつ造できない感動が、人の心を動かす。

How じゃなく、Why。 このブログでも幾度となく取り上げてきているこの命題は …

基準が曖昧なものほど奥が深いのだ

「おじょうちゃん、いい青に塗っといたよ。」   土建屋を営んでいた実家 …

出会いの数だけ別れがある

音楽はたくさんの出会いをくれます。 音楽はひとりではできないから。 一緒に演奏す …

歌うときのオケ、どうしてます?

さて、ある程度練習が進んだら、 オケに乗せて、自分の歌を録音してみたいもの。 & …