すごい演奏は、お互いの音をちゃんと聴くことからはじまる。
生演奏の面白さは、コミュニケーションの面白さです。
お互いの音を聞きながら、寄り添い合ったり、
誰かがリードしたり、
そこに乗っかってみたり、
ちょっと抵抗して、違う流れをつくってみたり。
一緒にやる人やオケーションによって、
「ですよね」という安心感もあれば、
「お、そうきますか?」みたいな、新鮮さもある。
そうかと思えば、
「いやいや、そうかなぁ?」もあるし、
「まいったなぁ、どうしよう」も、もちろんあります。
長年連れ添っているバンドでも、
演奏の最中に、お互いに目をあわせて、ニヤリとしてしまう瞬間もあれば、
「おっと」と舌を出して顔を見合わせる場面もいっぱいあって、
そんなやりとりのひとつひとつが、
ミュージシャンも、お客さんも、めちゃくちゃ楽しいわけです。
そうやってライブを重ねていると、
時に演奏したり、歌ったりしながら、
心の中で「うぉ〜〜、カッコいいっ!」と叫んでしまうような、
マジカルな瞬間と出会えることもあります。
こればかりは、本当に意図して起こせることじゃなくって、
「前回、すっごいよかったから、今回もあんな感じでやろう」
などとやってみても、二度と同じ感じにはなりません。
その日のミュージシャンのバイオリズム、
ライブハウスの状況や音響、
そしてオーディエンスの醸し出すバイブ。
すべてが渾然一体となって、
化学反応を起こすことではじめて舞い降りる奇跡。
あれを一回体験すると、ライブはほんっとにやめられなくなります。
PC相手、カラオケ相手に練習することの多い若者は、
この「コミュニケーション」が苦手な子が多いのです。
お互いの演奏を聴きながら演奏しているというよりは、
各自、自分のタイム感を頼りに演奏しているように感じられることさえあります。
曲はすっかり覚えているくせに、譜面から目を離さないまま演奏したり、
演奏が終わっても、自分の足下や手元を見ているだけで、
特に、誰も何も言い出さなかったり。
耳の焦点、意識の焦点が、
なかなか他の人の音に合わないのかもしれません。
まだまだ自意識が高い年齢の子もいますから、
お互いの関係性を深めるのが難しいのかもしれません。
まるで全員が横並びに前を向いて、せーので歩いているかのようです。
お互いの気配は感じているし、
足並みをそろえようと気を使っているようすもある。
はい、ゴールに着きましたね。
という感じで演奏が終わるのです。
しかしね。
がんばって、もう1歩前に進んでみて欲しいんです。
丸くなって、高速でマイムマイムを踊るくらいの、
(え?知ってるよね?)
お互いを盛り上げたり、
激励し合ったり、
振り落とされまいと食らいついたり。
顔を見合わせてガハガハ笑っちゃうくらいの、
なんか、そんなハジケた時間を体感してみて欲しいわけです。
それこそが音楽の醍醐味。
そして、いつか出会って欲しい、マジカルな瞬間への入り口です。
耳と意識の焦点を、ちょっと変えてみる。
勇気を出して、1歩前に出てみる。
まずはそこからですね。
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