「上達」は、いきなりやってくる。
スポーツジムなどでトレーニングを受けると、
「今日より明日、明日より明後日というように、
運動の回数は少しずつ増やすこと。
負荷もいきなり上げず、ちょっとずつ上げていくように。」
と指導を受けます。
筋力や持久力は基本、
トレーニングにかけた時間に比例して伸びていくもの。
実にわかりやすく、シンプルに結果が出るので、
モチベーションもあがります。
しかし、歌や楽器の練習は、そうはいきません。
何度歌っても噛む。
歌っても歌っても、音が当たらない。
どうやったって、出したい音が出ない。
「才能」ということばを持ち出したくなるのも、
無理はありません。
できる人は、最初っからできる。
その点も、筋トレと違うところです。
持ち上げたこともないのに、
何十㎏もの重さのものを持ち上げられる人はいない。
でも、歌では、練習したこともないのに歌える、
という人が普通にいます。
しかし、そこで「才能がない」とあきらめない人だけに、
いきなり「上達」はやってきます。
もうね。いきなり、くるんです。
昨日まで、できなかった。
なんなら、さっきまでできなかった。
それが、ズドンと集中した瞬間に、
やってみた、そのときに、
え?ぐらい、あっさりできてしまう。
練習しても練習しても出なかった声が
ライブの最中にいきなり出て、
自分で驚いて、飛び上がりそうになったこともあります。
そして、やってきたのと同じくらい、
また、いきなり、できなくなるのです。
それがどうやら「脳」というものらしい。
技術をカラダに入れることは、
脳とのコネクションをつくっていく作業です。
新しい動作を脳に覚え込ませる。
間違った動作をしようとしたら、
「違う!」と脳に言いきかせる。
脳と神経と筋肉と・・・そのすべてが複雑に関係しあって、
刺激し合い、反応し合い、フィードバックし合い。
そんな一連の流れが、
どこかひとつでもうまくいかないうちは、
何度繰り返しても「できない」わけです。
そして、いきなり「あ!」という感じで、
その全てが繫がる。
またあっさり見失う。。。
で、また、いきなりできる。
だんだんと、この「見失う」と「できる」の確率が変わっていき、
やがて、どんどん成功率が上がっていく。
上達は、こんな経路をたどります。
本当につらいのは、
「いきなりできる」そのときまで。
数日でできる場合も、数週間かかる場合も、
数ヶ月がんばってもダメな場合もあります。
その間に、自分が信じられなくて、
やめてしまったらそれまで。
けして「上達」を体験できないのです。
がんばっても結果が出ないとき、
落ち込むのは誰だって一緒。
落ち込んだその後で、
もうダメだとあきらめるのか、
ちくしょう、今に見ていろとがんばるのか。
試されるのは、そのときです。
◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事から、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。
◆ 一から歌を学びたいという方にも、基礎を見直したいというプロの方にも。オンラインのお得なBasic3パック。
関連記事
-
-
「情報」との関係性を見極める
学校で音楽や歌を学ぶ一番のメリットは、プロフェッショナルの先生方に、 そのノウハ …
-
-
何がやりたいかわかんない人に教えるのが一番ムツカシイ。
たいがいの無理難題は受けて立つタイプですが、 レッスンを担当することになって、な …
-
-
「努力」なんか好きじゃないっ!
「あなたみたいに、努力するのが好きな人のマネはできないわ。」 一緒にお仕事をやっ …
-
-
人は「エネルギー」なのだ。
昨日、70日ぶりに、 レッスン室にクライアントさんをお招きしました。 10週間。 …
-
-
カバー曲の歌唱にオリジナリティをプラスする3つの方法
「オリジナリティ」と「クセ」は紙一重です。 「オリジナリティあふれ …
-
-
人生は「パッション」がつくるのだ。
ある時期、心から夢中になって、 一度でも自分のカラダの中を通り過ぎたものは、 自 …
-
-
自分の「サイズ」に合った声を出す
管楽器ほど、 一目見ただけで音色の想像がつく楽器もないでしょう。 大きさ通り、見 …
-
-
「結局、誰よりも渇望した人間が・・・」
「なんで歌の学校なんか行くの? 歌なんか、習うもんじゃないでしょ?」 大学4年の …
-
-
「エアギター」のススメ
ギターリストになりたくて、 明けても暮れても練習していた時代があります。 今やこ …
-
-
英語の歌詞って、どうやって覚えるの?
「歌詞を覚える」というのは、ある種の習慣です。 何を当たり前と思うか、という気構 …
- PREV
- ロックは毛穴で聴くんである。
- NEXT
- 「オリジナリティ」ってなんなのよ?

