「観客総立ち」を演出するプロの仕掛け
2016/01/12
先日、キャロル・キングのケネディー・センター名誉賞をたたえて、
アレサ・フランクリンが、
“(You make me feel like a )Natural Woman”を熱唱するようすが
話題になっていました。
アレサの圧倒的な歌唱力に会場は総立ち。
73才のアメリカの国民的シンガーは、今も健在。
さすがの一言です。
本当に嬉しくなりました。
さて、アレサの歌は本当に本当に素晴らしかったのですが、
このパフォーマンスには、
動き、歌唱、アレンジなどなど、の随所に
観客を総立ちにさせる仕掛けがちりばめられています。
その鮮やかさに、プロフェッショナルとはこういうものと、さらに感動したので、
今日は、このyoutubeの映像を題材に
『「観客総立ち」を演出するプロの仕掛け』をお届けしてみようと思います。
1.「意外性」で心を動かす
ステージに昇っていきなり、ピアノの弾き語りというスタイルで歌いはじめたアレサ。
もちろん、アレサは弾き語りをすることでも有名ですが、
1曲しか歌わないパフォーマンスで、あえての弾き語り。
キャロル・キングのスタイルに敬意を表したのかもしれませんが、
この憎い歌い出しに、まず、観客は心を奪われています。
パフォーマンスで仕掛けるときは、
「あれ?」という、いい意味で観客の期待を裏切ることが不可欠です。
「お約束」をあえてはずす。
そこにドキドキ感が生まれるんですね。
2.人間の「声の力」を十二分に使う
人間の「声の力」は絶大です。
集まって、声を合わせているだけで、人は高揚するものです。
人の心にダイレクトに訴えるという意味で、
人間のつくった楽器は、神様のつくった「声」という楽器にはなかなか勝てません。
この時のアレサのパフォーマンスでも、
従来のバージョン以上にコーラスがフィーチャーされて、高揚感を煽ります。
また、このコーラスの人たちが素晴らしいので、
もう、本当にドキドキしてきます。
3.「動き」で、さらに高揚感を!
大サビで、アレサはおもむろにピアノから立ち上がって、
ステージの中央に移動します。
同時に、コーラスの人たちも、
それまでアレサの方、つまり横を向いていたのに、
アレサと一緒に、正面に向き直ります。
ただでさえ、大サビで気持ちが盛り上がってくるところに、
ぐぐっと視覚的にクローズアップされてくる。
人は距離が近くなると、より心を動かされます。
さすがの移動作戦です。
4.アドリブ、ロングトーンなどで自分の声の魅力をあますところなく聴かせる
ノックアウトシーンは、アレサの圧倒的な声の力によってもたらされます。
自分の声の、歌の、一番美味しいところを知り尽くした女王。
ここから、気持ちのこもった、
素晴らしい説得力のあるフレーズの連発になります。
前半の押さえた歌唱から、大サビでのスーパーダイナミックなアドリブ。
このジェットコースターのようなアップダウンが、
観客の心を、思いきり揺さぶり、感動へと高めてくれるのですね。
5.聴衆に立ち上がるきっかけを与える仕掛け
このパフォーマンスの中で最高に憎いのは、
アレサが毛皮を脱ぐシーンです。
人は、「ステージで服を脱ぐ」という光景に、なぜかどきっとするもの。
その憎い演出が、
なんと、もっとも高揚感のある、
ラストのアドリブが最高潮に盛り上がるところに仕掛けられているなんて。
もう、「やられた」です。
その証拠に、アレサが毛皮を脱ぎはじめた瞬間に、
観客は騒然となり、その勢いで、みんなが立ち上がります。
衣装を決める時点で、ここまで仕掛けが決まっていたとしか思えない。
アレサ自身で決めたことなのかもしれませんが、
本当にプロフェッショナルな、素晴らしい演出です。
いかがでしょうか?
もちろん、実力もないのに、演出だけで人を感動させることはできません。
素直に、「素晴らしい!」と感動しながら、音楽を楽しむことも、
もちろん、もちろん、大事です。
しかし、送り手となりたいなら、
こうしたyoutubeを「カッコいいなぁ。」「すごいなぁ」と見るだけでなく、
時に、「なぜ、すごいのか?」と考えながら、
また、「パフォーマーとして、見習えることはなにか?」と分析しながら、
見てみることも必要ですね。
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