声の変化と向き合う vol.2〜変化を受け入れ、味わい、楽しんだものが勝ち
「声の老化」についての第2回です。
第1回は、年齢を免罪符にせず、自分自身と向き合って努力しよう、
というお話を書きました。
努力次第で声をいい状態に保ち続けることは可能。
年齢のせいにして、「仕方ないね」とあきらめる前に、
できることは沢山あるはず。
そんなお話でした。
この回の投稿には、
「耳が痛い」
「勇気をもらいました」
などなどたくさんの反響をいただき、私としても嬉しい限りです。
ありがとうございます。
しかしです。
今日は、全く反対のお話を書こうとしています。
そう。声は年齢によって変化します。
これは、誰がなんと言っても、変えようのない事実です。
発声はスポーツです。
声を出すということは、全身の内外の筋肉とさまざまな器官が関与する、
全身運動なのです。
どんなに努力しても、
どんなにトレーニングを積んでも、
一生金メダルを取り続けられる人もいなければ、
オリンピック選手でいられる人もいません。
どんな天才でも、どれほど努力している人でも、
スポーツ選手を引退しなければいけないときがくるのは、
カラダが老化に勝てないという証拠でしょう。
努力している人ほど、また、成功体験が大きい人ほど、
この「老化」を受け入れるのが恐いものです。
音域が狭くなったんじゃないか?
声が濁ってきたんじゃないか?
パワーが弱ってしまっていないか?
持久力が落ちてしまったのではないか?
最近、ノドを壊すことが多くなってきたのではないか?・・・etc.etc…..
そんな風に思って、
ドキドキしたり、歌うのが恐くなったり、
周囲の反応が必要以上に気になったりする。
不安が高じて、声が出にくくなったり、
中には、過去のイメージを壊したくないと、引退してしまう人さえいます。
ここで、目を背けてはいけない事実を確認します。
年齢を重ねれば、カラダは確実に変化します。
全身の水分含有量は少しずつ減っていきます。
こどものときは全身の70%もある水分が、成人では60〜65%、
そして、老人ともなると、50〜55%にまで減ってしまいます。
当然お肌は乾燥し、弾力がなくなります。
ドライアイになったり、口が渇きやすくなったりします。
同じように、筋肉は衰え、靱帯は硬化し、
声帯に細かい傷のようなものがついたりします。
どんなにエステに通ってお手入れしても、ヒアルロン酸を注入しても、
皮膚の老化に歯止めをかけることが不可能なように、
口腔内の筋肉も皮膚も、少しずつ張りを失い、
ゆるんでいくでしょう。
髪の毛が失われたり、光沢をなくしたり、
細くなったりすることからもわかるように、
全身のタンパク質の含有量も少しずつ現象します。
若い頃、バリバリ肉を食べていた人が、
和食でないと消化できなくなるように、
臓器の機能も低下していきます。
同時に、呼吸機能も低下。
発声に使われる各筋肉群の力も持久力も、徐々に下降していくでしょう。
どんなに努力しても、変えられないことはあるのです。
しかし、いつも書くように、
それは変化であって、劣化ではありません。
生きとし生けるものは変化していきます。
変化しないものは、命のないものだけです。
命のないものは、やがて風化していきます。
それが自然の摂理です。
人間は、その変化を受け入れて、
折り合いをつけて、生きていかなくてはいけない。
そして、これは、どんな人も、いつか、確実に、平等に向き合う
生きることの課題であるわけです。
ならばその変化を、受け入れ、味わい、そして、楽しめたもん勝ち。
変化する自分の声を、愛すること。
そして、今ある、自分自身のベストを引き出すこと。
そんな風に考え方をシフトできた人だけが、
ハッピーに変化をトリップして行かれるのではないでしょうか?
関連記事
-
-
「一般の人は声に興味なんかないんですよ。」
もう何回言われてきたんでしょう。 「一般の人は声に興味なんかないん …
-
-
前進し続ける人に共通のキーワード
「もう」は「まだ」なり。「まだ」は「もう」なり。 私の文章によく登場するので、最 …
-
-
風邪の治りかけ。「ガラガラ声」の原因は?
今年の風邪はいやらしい、とは聞いていましたが、 いやいや。まじで。 いつまでも、 …
-
-
「思いきりOFF」で、効率をあげる。
「休みの日には思いきり休みなさい」と、みんなに言っています。 たまりにたまった雑 …
-
-
テクノロジーってどうやねん?
PCを使いこなせないと、人との情報のやり取りが非常に難しい時代になってきました。 …
-
-
人生はリハーサルのない、1度限りのパフォーマンス
ひとりのミュージシャンの生涯には、 どのくらいの苦悩や葛藤、挫折があるのでしょう …
-
-
欲しい情報は、ありとあらゆるところにみつかる
「カラーバス効果」ということばをご存じでしょうか? 心理学用語で、 …
-
-
「好き」を極める。
「好き」にもいろいろあります。 なんとなく好き。 どちらかと言えば好き。 結構好 …
-
-
「何言ってやがんでぇ」と吠えてみる。
かれこれ10年近く前のこと。 さる著名な文筆家が主催する食事会に参加させていただ …
-
-
「らしさ」の延長にしか、成功はない
歌の道でプロを目指そうと心に決めたのは、たぶん、20才くらいの時。 ピアノもダメ …
- PREV
- 「観客総立ち」を演出するプロの仕掛け
- NEXT
- 勇気を出して、「酷いことを言う人」になる。

