声の変化と向き合う vol.1〜発声は運動、歌うことはスポーツです〜
2016/01/08
「年のせいか、高い声が出なくなっちゃって。。。」
「私、最近声が枯れてきちゃったんですけど、年だから仕方ないんでしょうか?」
不調になると、急に気になる「声」。
特に、年齢を重ねて、声が気になるようになった、という人は多いようです。
さて、2016年から解禁した、「声」の話。
まずは、多くの人が気になる「声の老化」についての第1回です。
発声は運動、歌うことはスポーツです。
あまり意識されていませんが、
「声」は全身運動によって生み出される音。
カラダのごく一部の限られた部品だけが単体で機能し、
声をつくっているわけではありません。
年を取れば、当然、体力は落ちます。
たとえば、同じ、シンプルな全身運動である、「歩く」で考えてみましょう。
10代、20代の頃は楽々、さくさく、歩けていた距離が、
30代、40代と年齢を重ねると、ちょっとずつ長いと感じるようになります。
50代を迎える頃には、同じ距離を歩くのに、
息切れしたり、ヒザが痛んだりする人もいるかもしれません。
60代、70代ともなると、
杖をついたり、乗り物に乗ったり、するようになるかもしれませんし、
80代以上になると、歩こうという気持ちさえなくなる人もいるでしょう。
さて、ここで考えてみてください。
歩くのが辛くなる、歩けなくなる原因は、老化だけでしょうか?
10代の頃は、体育の授業がありました。
友達と、アクティブにカラダを使って遊んだりもしました。
部活で、びしばしカラダを鍛えていた人もいるでしょう。
ところが20代になって、仕事を持ってからはどうでしょう?
体育はありません。
営業のお仕事や、カラダを使うお仕事をしている人は別ですが、
学生時代に比べ、運動量がびっくりするほど減ったという人が
ほとんどではないでしょうか?
一日中、PCの前に座って、声も出さずに仕事をしている人が
一体どれだけいることか。
当然、筋力は衰えます。
姿勢力も呼吸力も衰えます。
同時にメタボリズム=代謝も下がります。
しかし、食欲は学生時代のまま。
さらに飲酒の習慣がついたり、
美食傾向になったり、
食べる時間が不規則になったり、
余剰カロリーが脂肪になって全身につき、
ますます代謝が落ち、動くのが億劫になります。
筋力が落ちたところに、脂肪がつけば、
カラダの各部の動きも緩慢になるのは当然です。
20代後半から徐々に体重が増え始め、
40代ともなると、学生時代から体重が10キロ増えたという人はざら。
脚力自慢だったお父さんが、こどもの運動会に出て、
足がもつれて大転倒する場面を、目撃したことのある方も多いことでしょう。
「年のせい」ということばは、私自身も都合が悪くなると、
免罪符のようにつかってしまいがちなことば。
しかしです。
すべて「年のせい」にすれば、
自分自身の自己管理の甘さや、自堕落さ、努力の足りなさが、
帳消しになると思ってしまってはいないでしょうか?
もちろん、年のせいで変わることは、たくさんあります。
(これに関しては、また別の機会にお伝えします。)
受け入れるべき変化を受け入れないのは、
かえって、結果を悪くしたり、ときに心身に歪みを与える事もあるでしょう。
「無理している」、「痛々しい」という印象を
周囲に与えることさえあるかもしれません。
それでもなお、
太るのも、成人病になるのも、姿勢が悪くなるのも、
お肌や髪の毛のコンディションが悪くなり、美しさが失われるのも、
運動能力が落ちるのも、
そして、発声力が落ち、声が衰えるのも、
単純に「年のせい」と言い切ってしまうには、
あまりに個人差がありすぎます。
「年のせい」にしないで、自分自身と向き合えた人だけが、
老化を遅らせ、若さを取り戻し、
時に、若者たちに負けないような心身と声を持つことができるのです。
耳が痛いお年頃の方も、
まだまだ先の話よね、と思っている人たちも、
ぜひ一度、自分自身と、自分の声と、向き合ってみてくださいね!
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