大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

ビジョンとチームワークが作品力になる。

      2022/09/14

お城や寺院、教会などのような歴史的建築物や、
アイディアとエンタテインメントが詰まったテーマパークを訪れるたびに、
一体全体、どこのどんな人が、
「無」からこれを創ろうと思いつき、言い出し、それを形にしたんだろうと、
もうね、心の底から感動します。

音楽は基本、一人、多くても数人の人間が、
自分たちの頭の中にあることを形にしていく。
そのプロセスの中で、ゴールそのものが変化することもあれば、
全然違う方向性を見出していくこともあるという、
自由きわまりないもの。

しかし、建築物はそうはいきません。
ビジョンがすべて。

どんなものを、どんな目的で創るのか。
誰のためにつくるのか、
このゴールが完璧に、明確に描けなければ、
絶対につくれない、いや創ってはいけないもの。

まれに、サグラダファミリアのように、
ゴールに到達しないことがゴール、のような、
アート作品的建造物もありますが、
それはレア中のレアで。

こんなものを建てよう。
どこに建てよう?
という土地探しからはじまって、
時には、海を埋め立てちゃおうみたいな壮大な計画に発展し、

まったくの「無」の世界に設計図を引くチーム、
人の流れをつくり出す仕掛けをするチーム、
設計図に色彩を与えていくデザイナーチーム、
最先端、最高峰の技術を駆使するテクニカルチーム、
細部に至るまで、ありとあらゆる部品の安全性を確認するチーム、
板1枚、釘1本のデイテールにこだわる職人チーム、
あり得ないことを可能にするための、
山のようなペーパーワークをこなしていくチーム…

そして、そんなプロ集団をとりまとめていく、
突拍子もないプロデュース手腕を持つチーム。

 

そうそう、忘れちゃいけない最重要課題、
(これをいつも忘れるからしかられる)
資本やコストや収益などの面をコントロールするチーム。

そんな、気の遠くなるほどの人数の人たちの、
チームワークがそこにはあります。

多くの人間が集まるほどに、
美意識の違いや、想い入れの差による問題が発生したり、
手抜きする人や、余計なことをする人間が出てきたり、
ごく一握りのクオリティの高い仕事ができる人と、
大多数のそうでもない人たちとのバランスを取る必要が出てきたり。

きっと、一番大変なのは、人間同士の問題を解決することで。
そこには、無数のドラマがあったに違いなく。

それでもなんでも、描いたゴールまで、
突っ走り続ける人間という動物のすごさを、
あらゆる人の思いが詰まった、
それでいて、ぶれないメッセージを発信している建造物の素晴らしさを思い、

チームの一員として
壮大な作品をクリエイトして行くひとりひとりの人に、
そのチーム力の偉大さに、
果てしなきリスペクトと感謝を覚えるのです。

ビジョンを明確に描くこと。
ぶれずに理想を追いかけること。
チームで心を寄せ合って、リスペクトしあって、
最後まで妥協せずに駆け抜けること。

作品の完成度を上げるには、それしかないのは、
どんな大きさのものをつくっていてもきっと同じですね。

■無料メルマガ『声出していこうっ』。プライベートなお話からマニアックなお話まで、ポップな感じで綴っていきます!(ほぼ)毎週月曜発行!バックナンバーも読めますよ。

 - Life, The プロフェッショナル

  関連記事

自分自身こそが「最も手強いオーディエンス」だ/『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』

「観客のことは意識しないことにしている。 クリエイトするときはいつもそうだ。 ま …

「仕事ができない」と言われる人にはワケがある

どんな人が「仕事ができる人」と呼ばれるかは、 業界によって、少しずつ違います。 …

遠慮すんな!

自分の意見をハッキリ言うせいか、 疑問をすぐに口に出すせいか、 はたまた、やりた …

「同じに出す」が一番難しい。

同じ音を連続して弾くとき、 ピアノという楽器の完成度の高さを、 しみじみと感じて …

現実が自分にフィットしないときに、 なぜ、自分を合わせに行こうとするのか?

生涯を共にできるようなメンバーになかなか巡り会えず、 日々バンドの人間関係に悩ん …

やりたいことは、「今」はじめる。 10年続ける。

無条件に何かを「楽しい」と感じられるようになるまで、 人は何かしらの学習を積み重 …

音楽には「顔」がある。「オケと歌」、じゃないんです。

楽器の人たちと話していると、 演奏中、ヴォーカリストとは全然違う視点で ステージ …

「無駄な努力」は、 果たして本当に「無駄」なのか?

「あ。これやってみたい!」 ちょっとした閃きに、心をつかまれて、 どうにもこうに …

どうせやるなら「ザ」のつくプロフェッショナルを目差せ!

先日、とある販売店でのこと。 まだまだ新米臭のある若者が、私たちの担当になりまし …

だから、嫌いなものは嫌い!

人の価値観はそれぞれです。 高くても、無理しても、 お気に入りのバッグを買いたい …