もたもた迷っている暇はない!
「もっと歌詞の意味を考えて歌って!」
そんな風に言われたことのある人は、たくさんいることでしょう。
そもそも意味のわからない外国語の歌詞はもちろん、
中には日本語の歌詞でさえ、まともに意味も考えず、
おまじないのように自動的に歌っている人が、
いったいどれだけいることか・・・
自分が理解できないことは表現できない。
表現できないことは伝わらない。
当たり前のことです。
さて、しかし・・・
意味を理解しようにも、まったく体験したことがないことは、
どうしたらいいでしょう?
真夜中のハイウェイをワイルドにぶっ飛ばしたことがないのに、
そんなロックな気分を味わいようがないですし、
恋すらしたことがないのに、
恋の切なさや燃え上がるような熱い想いは、やっぱり理解できない。
世界を旅する自由な気持ちを歌いたくたって、
自分の生まれた土地から、
せいぜい100キロ圏内くらいしか出たことがなければ、
その果てしないスケールを表現するのは難しいでしょう。
だからこそ、ヴォーカリストは、
可能な限り、自分の世界を広げる努力をしたいのです。
かつて、
「人生のいいことも、悪いことも、
全部味わって、初めて本当にいい歌が歌える」などと言われ、
「神様、どうか私に艱難辛苦をお与えください」なんて、
人に聞いたお祈りもどきをしてしまったことがあって、
何年にもわたり、
それはそれは、もう筆舌に尽くしがたい、
艱難辛苦の数々をいただいてしまった私としては、
人生の負の部分をわざわざ望む必要なんかないと、ハッキリ言いたい。
しかし、それでも、
可能な限り、旅をし、
たくさんの、さまざまな人と出会い、
できれば外国語を話し、
いろんな文化圏の、いろんな価値観を持った人々と、
いろんな、いろんな思いを共有して、
ひとりひとりの人を、ひとつひとつの出来事を、
一方からだけでなく、さまざまな角度から見つめ、
理解し、もしくは理解しようと努力し、
いろいろな仕事をする、いろいろな人々と、
利害関係を持ったり、
利害の無い関係を持ったりして、
友情や、愛情や、憎悪や、嫉妬や、羨望や、
憧れや、憐憫や、誇りや、挫折や、希望や・・・
そんなたくさんの、たくさんの思いを味わうことは、
やっぱり、やっぱり、意味のあることなのだと、
年を重ねるごとに、しみじみ、しみじみ、感じるのです。
もちろん、何もかもを体験することなんてできません。
本をたくさん読んで、
人間の最大の財産のひとつである、
「想像力」を研ぎ澄まさなくてはいけないことも、山ほどあります。
若かりし頃、永遠に、無限に思えた時間は、
実は、びっくりするほど限られていて、
指のすき間からこぼれ落ちるように、さらさらと流れていってしまうもの。
もたもた迷っている暇は、ないんですぞ。若者よ。
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