大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

おとなってのは「なんか」言うもんなんです。

   

自分がなかなかにナイス・エイジなおとなになって、しみじみ、
おとなってのは「なんか」言いたくなっちゃうものなのだなぁと、
感じています。

 

よく考えてみれば、それは動物の本能とも言える。

動物の世界だって、おとなはこどもを諭したり、
教育したりすることでこどもを守っている。

おとなは時間軸を先にいってる分、
当然、物事をたくさん見ているから知恵もある。

その知恵を、後進たちにシェアすることは、
おとなのアイデンティテイであり、義務でもあるわけです。

 

けどね・・・・

 

そういう、おとなたちの、
「おれら、ひととおり見て来てるから」的な、
訳知り顔のアドバイスは、若者にとっては、正直、8割うざい。

 

こちらの気持ちも、事情もわからないのに、
上から目線で意見をかぶせてくる人。

誰でも言いそうなこと、自分でもとっくに気づいていることを、
なんだか延々と語ってくる人。

「あー、違うんだよね−」と、
話の最初からずっこける聞き手に気づくことなく、
自説に酔いしれ、しゃべり続ける人。。。

 

山のように受けるアドバイスのうち、
素直にありがたいと感じられるものや、
心から役に立つと思えるものは、全体の2割にも満たないでしょう。

 

だから、若者って、おとなが嫌いになっちゃうんですよね。

 

私も、おとなにはさんざん傷つけられたり、裏切られたりしたので、
ぶっちゃけおとな恐怖症のようなところがありました。

「そんなんじゃ売れないから、もっと○○やった方がいいよ」も、

「ハッキリ言って、そのルックスじゃあね〜」も、

「あ〜、あんなヤツの言うこと聞いたってしょ〜がないでしょ〜」も、

 

・・・その他数え切れない、F○○Kなおことばも・・・

 

結局、誰1人、責任を取ってくれたわけではいないし、

もっと言えば、
私のために発せられたことばですらないということに、
気づいたのは、何年も経ってからのことでした。

 

「なんか」言いたかっただけ。

 

自分はすごいんだ。というパフォーマンスのため。

どちらが上か、わからせようという、マウンティングのため。

そして、俺もわかるようになったわよね、という自己満足のため。

 

そうそう。

自分を嫌な気持ちにさせるおとなの8割は、上記3つのどれかです。

 

「じゃあ、8割を回避して、
大切な2割のアドバイスだけを聞けばいいんですね!?」

・・・と思うかもしれませんが、

残念ながら、なにがその「2割」かがわかるのは、
何十人、いや、100人くらいのアドバイスを聞いた後なんです。

 

まして、自分にとって心地いいことばばかりが、
自分の成長の助けになるとは限りません。

 

多くのアドバイスを聞いて、
感謝したり、傷ついたり、歓喜したり、泣き叫んだりしながら、
自分の価値観がきちんと育てば、
やがていらないアドバイスは耳に入ってこなくなります。

 

それが、おとなになるということ。

 

 

いいおとなも、そうでもないおとなも、
まるっとひっくるめて、
若者の価値観を育て、はぐくみ、
若者がおとなになる手伝いをしているということなんですね。

 

だから、おとなは「なんか」言う。

 

私だって、今日もこうして、「なんか」言っているわけです。

 

あなたの2割になれることを、ちっちゃく祈りつつ。

 

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 - Life

Comment

  1. ゆうみ より:

    初めまして。
    http://misumiotsuki.com/?p=4228
    この記事をたまたま読んで、もっと読みたいと思って、このB面ブログは全記事目を通しました。

    私はギターボーカルです。
    音楽でこそただの趣味でやっておりプロになる気はありませんが、プロのようにうまくなりたいという気持ちはあります。
    数々の練習法や考え方、すごく参考になります。

    音楽とは別に、ミュージシャンとしてプロになって売れるのと同じくらい? 狭き門の先を夢見ていることもあり、このままやっていて大丈夫か……と心折れ気味のところもありましたが、そういう類のマインドの話も、元気づけられました。
    アルバイトでは塾講師をやっておりますので、「教える」系の記事の心づもりも胸に刻み……。

    覚えておきたいことはメモに残しました。メモを取りながらブログを読んだのは初めてです。
    ありがとうございます。

    一つ、質問です。リクエストといいますか。
    私の歌についての大きな悩みの中にタイム感が悪いというのがあります。
    ドラムやベースは聞いているつもりですが、その聞こえているリズム隊のビートにバチっとあっている気がしないことが多く……(リズム隊は結構信頼のおける人にも関わらず、です)。
    メトロノームにさえ気持ちよく合わせられないことが多いです。
    ブログの中でピッチの合わせ方なんかは何度か書いてらっしゃいましたが、タイム感向上の方法については余り書いてらっしゃらなかったので(子音をしっかり発音するべきとの記事はありましたね)、もしよければご教示いただけますと嬉しいです。
    本当は先生のレッスンでも講座でも受けて聞かなければいけないところ、失礼します。できればで結構です。

    長々と失礼いたしました。

  2. otsukimisumi より:

    >ゆうみさん
    励みになるコメントありがとうございます!
    本日のブログでリズムについては言及いたしました。
    「タイム感」も大切な問題ですね。
    近いうち、取り上げたいと思います!お楽しみに。

  3. 匿名 より:

    お返事いただきましてありがとうございます!
    タイム感についての記事、楽しみにお待ちしております。

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