「コピー」を卒業したいなら、徹底的に「コピー」する
楽曲のパフォーマンスには、
「オリジナル」と「カバー」と「コピー」の3種類があります。
「オリジナル」は文字通り、自分たちでクリエイトした楽曲のこと。
「カバー」は、オリジナル曲の美味しいところをいただいて、
自分たちなりに演奏すること。
そして、「コピー」はオリジナル曲を、そのままマネして演奏することです。
さて。
「音楽を学ぶ」ということは、先人たちのつくり出したものを、
取り入れ、消化し、自分自身の血と肉とすること。
その最も手っとり早く、確実な方法が「コピー」であると言われています。
「コピー」をするのは歌舞伎の「型」を学ぶのと似ています。
つまり、その「型」をなぞるうちに、
その「型」に宿る意味や、スピリッツを体感していくのです。
重要なのは、「どう演奏するか」ではなく、
「なぜ、そう演奏するか」なのです。
スピリッツレベルで、「型」をなぞるうちに、
だんだんと、自らの「型」が生まれていきます。
「完全コピーを繰り返して、絶対似ないところがオリジナリティ」
とも考えられる。
そうやって、「型」をなぞり、テクニックを身につけながら、
スピリッツ、魂のようなものを育てていくわけです。
こうした「コピー」を馬鹿にするような向きは根強くあります。
「モノマネじゃなく、オリジナルをやれ」というのは、
もちろん、アーティストであれば当然のことです。
「誰のマネも一切しないで、素晴らしい演奏ができる天才」なら、
それもいいでしょう。
しかし、あくまでも自説ですが・・・
世の中には100%の「オリジナル」なんてものは、最早存在しない。
たったひとつのことばですら、誰かが考えたものであるわけで、
メロディだって、12音の順列組み合わせ。
すなわち、どんな音楽も、多かれ少なかれ、
誰かの「マネ」、「コピー」、「カバー」でできているわけです。
天才といわれる人は、無意識レベルで、
先人たちのつくり出したものをものすごい勢いで消化、吸収し、
そのエッセンスを抽出して、
「オリジナル」に組み替えているのです。
凡人がそんな人たちのマネをしてはダメなのです。
「型」を学ぶ。「コピー」する。
そこから「スピリッツ」を感じ取る。自分のものにする。
優れた「カバー」、そして、本当に素晴らしい「オリジナル」は、
そうした蓄積からしか生まれません。
「オリジナリティがなくなるからコピーなんかするな」
などと言っている(天才じゃない)人に限って、
演奏が凡庸だったり、稚拙だったりするものです。
また、人の楽曲をコピーして演奏しているはずなのに、
中途半端なコピーでわかったような気持ちになって、
適当に「自分なりのアレンジ」を加える人がいます。
というか、そういう人は実に多い。
「スピリット」どころか、「型」すら、なぞれない。
あげく、「おもしろくない」とか、
「所詮、マネじゃ、自分らしさが出ない」などと言う。
「マネ」のレベルで終わってしまうなら、
「コピー」には意味はありません。
大切なのはエッセンスを自分の中に染みこませることなのです。
逆説的かもしれないけれど、
「コピー」を卒業したいなら、徹底的に「コピー」することです。
本当の「オリジナリティ」はその先にあるはずです。
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