「完璧」の基準が「自分」がつくる。
2018/02/14
何年か前まで、夏休みの宿題として、
「大好きな曲を1曲だけ選んで、徹底的に練習して、
これで完璧です!と言い切れる音源を完成させてきて」
という課題を出していたことがあります。
この宿題には、さまざまな想いが込められていました。
「どんな音楽が好き?」と質問されて、
すっきりした答えやことばが出てこない若者たちに、
自分はどんな音楽が好きなのか、
じっくり時間をかけて考えて欲しい。
たった1曲だけ選ぶとしたら、
たった1曲しか歌えないとしたら、どの曲を選ぶべきか?
曲選びは、単に「好き」という基準でいいのか?
自分に向いている曲はなにか?
自分が歌いたい曲はなにか?
こうした課題に向いている曲はなにか?
そうやって、「自分の1曲」を選び取って欲しい。
曲を決めて、練習しはじめたら、
次はキーをしっかり決める。
なぜ、このキーなのか?
半音上や、1音下ではなく、なぜ、そのキーを選ぶのか?
そうやって、選び抜いた曲を、練習して、練習して・・・
では、どんなオケで録音したらいいのかを考える。
「これで完璧です!」と言い切れる音源をつくるのに、
ふさわしいオケは何か?
どうやって準備するのか?
カラオケなら、その精度はどうか?
弾き語りなら、何故、その楽器なのか?
誰に頼むのか?自分で弾くのか?
録音はどうするか?
マルチ録音をつかうのか?
カラオケ屋さんで録るのか?
誰かに頼むのか?
一発録りなのか?
なぜ、その録音方法を選び、
なぜ、最終的にそのテイクを選び、提出するのか・・・・?
授業の中で、レッスンの中で、
繰り返し、ひとつ、ひとつ、
こだわることへの大切さを語ってきました。
最初にこの課題を思いついたときは、
我ながら秀逸な宿題だ、と思ったものです。
しかしです。
この宿題の結果は、非常に残念なものでした。
ある子は、「先生、宿題、やるの忘れてたんで、来週持ってきてもいいですか?」と言う。
またある子は「曲、わかんなかったんで、前期の課題曲やったんですけど。」と言う。
カラオケ屋で、いつも歌っているような曲を、
ぱぱっと録音してきた子もいました。
一発録りで、とりあえず歌ってきました、
という子もいました。
何ヶ月も前のバンドのリハの音源を持ってきた子もいました。
宿題が出ていたことすら、
すっかりこんと忘れていた子も、3割程度いました。
ごくごく一部の子をのぞいて、
どの歌も、「宿題だから」、「とりあえず」という歌ばかりで、
聞くほどに本当にがっかりし、
何年か後には宿題を出すことすらやめてしまいました。
こちらが描いていたようなレベルで課題を仕上げて来た、
そんな、一握りの子たちは、
課題なんか出されなくてもやる子たちです。
なにひとつ課題も宿題も出さなくても、
「先生、夏休みにこんなの録ったんです。聞いてください。」
と、目をきらきらさせて持ってきたものです。
課題だからやるんじゃない。
音楽が好きで、
いつだって追いかけていたいから、
どんな小さなことにでも、取り組まずにいられない。
課題を出されなくちゃ、取り組もうと思わない時点で違うんだ。
課題を出す、宿題を出すことは、
しごいているようでいて、
どこか、甘やかしているのと変わりません。
もちろん、教わる側には、
与えられた課題をそつなくこなす。
要求に答えようと努力して取り組む。。。
そんな姿勢も大切でしょう。
しかし、
やるべきことを、自分自身で見つけ出す力こそ、
学生時代に一番身につけなくてはいけない大切なことなのではないか。
あれをしなさい、こういうことを考えなさいと、
言われなくなるときは、
自主性を尊重され、期待されているときか、
もうこりゃダメだわとあきらめられているとき。
そういうことです。
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