大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

すべては「可能」であり、「正しい」は自分が決めるのだ。

   

「クラシック」という音楽のイメージに、
ヨーロッパ的華やかさと優雅さを重ね、
妄想のおもむくままに、ピアノを志した中学時代。

しかし、クラシックという音楽は、
そう簡単にドアを開いてはくれませんでした。

指の形はこう。こうやって弾いて。
これとこれとこれができないと、次に進めないからね。
この曲を弾くには、こっちの曲が終わらないとダメなのよ。
音大行きたいなら7才くらいまでにピアノはじめなくちゃ無理よ。
あなたは指が短いから、この曲は弾けないわね。
この年からだと、聴音できるようになるのは難しいわね。
・・・etc.etc.

 

時代もあるでしょうが、
とにもかくにも、
「これが正しい」と「あなたには無理」の壁が、
高く高く立ちふさがっていました。

 

ロックにどんどん傾倒していったのは、
そんな壁に嫌気が差し始めた頃。

だって、ロックには、
「これが正しい」も「お前には無理」もなかったからです。

 

好きな曲から弾けばいい。

自分が弾きたいように弾けばいいし、
歌いたいように歌えばいい。

弾きづらいなら弾きやすいように曲を変えればいい。

やりたい曲がないんなら、自分でつくればいい。

楽器が自分の手に合わないなら、
手に合うように楽器を選んだり、変えたりすればいい。

楽器は何色だっていいし、
何なら、どんな形をしていたっていい。
チューニングだって、どうやったっていい。

叫んだって、囁いたって、うめいたって、
キレイな声だって、汚い声だって、なんだっていい。

どんな髪型だって、化粧だって、
なにを着たって、
なんならなんにも着なくたっていい。

すべては「可能」であり、
「正しい」は自分が決めるのだ。

ロックのルールは、私のような反逆児にぴったりでした。

 

自分が弱っていると、ふと、
このルールから逃げ出したくなるときもあります。

誰かが決めた「正しい」を追いかけて、

これを着て、
こう話して、
こう振る舞って・・・と、
マニュアル通りにしていれば、
安心領域に身をおけるのにと、
葛藤に苦しむこともあります。

 

「正しい」を振りかざす人に心傷つけられて、
道に迷うこともあります。

 

しかしです。

 

ロックに生きる私たちが、
「自由」の恐怖と戦っているように、

「正しい」を振りかざす人たちだって、
自分たちを守ってくれる「正しい」という檻の中で、
がんじがらめになって、身悶えしながら生きている。

どちらがしっくりくるか。
どちらを心地よいと感じられるか。

最後は、自分が選ぶこと。決めること。

 

すべては「可能」であり、
「正しい」は自分が決めるのだ。

 

私は、当分、このロックのルールで行こうと思います。

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