大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「存在感」を研ぎ澄ませ!

   

だいぶおとなになってから、生まれて初めて「セミナー」というものに出席した時は、世の中には、なんちゅうアウェイな世界、アウェイな人々が存在しているのだろうと、違和感に身の縮む思いがしたものです。

ところがだんだん慣れてくると、あぁ、実は講師というお仕事もシンガー、パフォーマーという仕事となんら変わらないんだな、と気付くようになりました。

講師が登壇した瞬間、一声発した瞬間に、これからはじまる講演で、どのくらい心が動かされるのか、真の学びを受け取れるのか、無意識に予測できるようになったのです。

シンガーがステージに登場した瞬間、「この人の歌は、こんなもんだろうな」と8割方予測できるのと同じ。
動物が出会い頭、本能的に序列が決まるのとも非常によく似ています。

こんな話をすると、「それってオーラがあるかどうかってことですよね」と言う人がいます。
もちろん、持って生まれるスター性、いわゆるXファクターの存在を否定するものではありませんが、どんなに才能を持っていても、磨かれなければそれまで。

某大スターにデビュー前会った時、「すっごい地味な若者で、こいつは絶対に売れないと思ったものだ」と話す人がいました。

世界の大スターたちにも、
「黒人たちのカッコいい動きを徹底的にマネした」とか、
「毎日鏡を見て、自分がカッコよく見える表情とポーズを研究した」とか、
「どうやったら目立つか悩んだあげく女性用の服を着てみた」なんてエピソードが数え切れないくらい残っています。

そんな試行錯誤が、ステージプレゼンスとなり、説得力となるのです。

最も大事なのは、「登場した瞬間に勝負は決まる」という事実に気づけるかどうか。

どんなにいい曲も、歌い手に魅力がなければ、聞く人の心に響きません。
どんなに内容のある、すばらしいスピーチも、話し手のパワーがなければ、聞く人の心を動かすことはできないんです。

アウェイだった私は、今、セミナー講師やビジネスエグゼクティブにも、日々、トレーニングをしているわけですが、
聞き手になると、無意識に、登場した刹那、話し手を値踏みするものなのに、自身が話し手となる時には、そこに意識の行く人が本当に少ないことに日々驚かされます。

どう登場するか、どんな声で話すか。
人前で話す人なら、一度は向き合って欲しい、あまりにも大事なことです。

 


6月17日の美崎栄一郎さんとのコラボ講演では、そんな、ちょっとレアな視点で「話す」の説得力について、お話します。
自分の話し方はどうなのか、チェックテストもやります。
人前で話す人はぜひ。

 

 

 - イケてないシリーズ, ビジネスヴォイス

  関連記事

最後は「自分の声」を聞くのだ。

「MISUMIサンはね、 もっと、自分じゃ恥ずかしくって赤面するくらい、 下世話 …

「わ。ピッチ悪い」をどうするか。

初めて「ピッチが悪い」と言われたのは、 歌の学校に通いはじめて、しばらくしてから …

テンポが速い曲の練習方法~Singer’s Tips #26~

「ゆっくり目の曲はうまく歌えないんです。 テンポの速い曲の方が得意です。」 時々 …

「正しく気づけない」から上達しないのだ

「神は細部に宿る」と言われます。 細部の大切さは誰もがわかっているはずなのに、 …

早急になんとかしたい、姿勢・筋力・体力。

「最近の若者は・・・」などということが言いたくなるのは、 お年をめしてきた証拠で …

条件が不利な人ほど、熱意がある

優秀なボイストレーナーのレッスンに通い、 思う存分自主練習を積み、めきめき上達す …

一所懸命やりがちな、『イケてない練習』

「歌ってどうやって練習しているの?」 レッスンを担当することになったボーカリスト …

歌詞が覚えられないのは、意味をわかっていないから。

「歌詞って、覚えられないんですよね。 どうしても、カンペ貼っちゃうんですよ。」 …

現実が自分にフィットしないときに、 なぜ、自分を合わせに行こうとするのか?

生涯を共にできるようなメンバーになかなか巡り会えず、 日々バンドの人間関係に悩ん …

聞いてるつもり。できてるつもり。がんばってるつもり。

「え?ホントにそんな風に聞こえるの? なんでそんな風に聞こえるかなぁ・・・・」 …