一所懸命やりがちな、『イケてない練習』
2015/05/05
「歌ってどうやって練習しているの?」
レッスンを担当することになったボーカリストたちに、一度はする質問です。
ほとんどの子の答えは、
「毎日、一所懸命歌っています。」
えぇ。そうです。一所懸命歌ってください。
で、どんな風に一所懸命やってるの・・・?
実は、そこで返って来る答えの、ほぼ8割が、
いやいや。そんなの練習って言えないわねぇ・・・のレベル。
今日はそんな、
「一所懸命やりがちな、『イケてない練習』」をご紹介しましょう。
1.「CDかけて、大きな声で、何回も歌います。」
これは、ものすごく高揚感がある練習です。
気持ちよく歌って、ついでにカラダも動かしたりして、
気分はすっかり、お気に入りのアーティスト。
しかし、ただ、気持ちよく歌っているだけでは、趣味の域を出ていません。
お気に入りのアーティストの声が、自分の歌えていない部分をしっかり埋めてくれる。
ピッチの悪い部分を補強し、カツゼツがハッキリしない部分をクリアにしてくれる。
歌が上達しているのではなく、「歌えた気になっている」だけです。
CDをかけて、練習するのなら、
オリジナルの歌を徹底的に聴いて、分析&研究する、
自分の声だけ録音して、チェックする、などの工夫が必要不可欠なんですね。
2.「ひとりでカラオケに通ってます」
こちらも、「やった感」満載です。
大好きな歌手の曲を次から次へとかけて、ひとりで1時間歌いまくる。
なんか、ストイックな匂いもします。
しかし、デッドにできている(残響音が少ないこと)カラオケBOXは、
自分の声の音色や共鳴を確認するのには不向きです。
また、カラオケのマイクや音響設備では、
自分の声をクリアに聞くことは難しいものです。
そもそも、それでは、一般のカラオケファンと変わりません。
一般の人と同じことをやっていたのでは、
いつまでたっても送り手の側に立てないのです。
自宅に練習する環境がなくて、カラオケBOXを利用するなら、
音の出るmp3プレイヤーや楽器を持参するなどの工夫が必要です。
ここでも、自分の声を録音してチェックする練習は忘れずに。
3.「弾き語りしています」
はい。最もアーティスティックで、ちゃんとした練習に近いスタイルです。
でもね、ここにも問題があります。
そもそも、楽器は上手ですか?
ギターやピアノをやっと弾いているのに、どうして歌の練習になるでしょう?
それは「弾き語りの練習」であって、「歌の練習」じゃないんです。
楽器と歌が、別々に、きちんとできるようになった上でやるべき、
両方の精度を下げないための練習です。
弾き語りで練習して、歌がメキメキうまくなるのは、
よほどの楽器の名手か、弾き語りのベテランしかいません。
第一、ギターの初心者は、チューニングが悪い。
チューナーを使っていても、うまく押さえられていないと、
ギターはピッチがゆるくなる楽器です。
また、よほど楽器がうまい人でも、
ボーカルがイケてない人にはまずはボーカルだけを練習するように勧めます。
なぜなら、長年習慣にしてきた楽器を弾くのに心地よい姿勢と、
歌うのに適した姿勢が違う場合がほとんどだからです。
まずは歌うバランスや、力のベクトルをしっかりとカラダで感じられるまで、
歌に集中することは、どんなに楽器の上手な人でも大切なことです。
以上、「一所懸命やりがちな、『イケてない練習』」をご紹介しました。
さて、あなたはどうやって歌の練習をしていますか?
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