どんなに「ふり」をしても、オーディエンスは一瞬で見破るのです。
「わからないことを、わかっているかのように、
できないことを、できるかのように語らないこと。」
MTLのインストラクター養成コースのテキストの冒頭に、
こんなことばを書きました。
人にものを教える立場になるには、自信と勇気が必要です。
どんなに知識があっても、
どんなに技術があっても、
どんなに経験があっても、
100パーセントの回答を用意出来る人はいません。
知らないことを聞かれたらどうしよう、
自分の知識や技術の底を見透かされたらどうしよう、
「お前なんか」と、舐められたらどうしよう、
そんな想いが脳内をぐるぐると巡れば、
恐ろしくて、教える側に立つことはできません。
だからといって、
そんな想いを悟られないようにと、
大上段に構えて、高圧的な態度を取れば、
ただ恐れられ、嫌われるだけで、
自分にも相手にもいいことはなにもありません。
はじめて学校で教えることになって、
どんな距離感で生徒たちと接したらいいのか途方に暮れたとき、
ふと、
「歌うように語ればいいのだ」
という想いが胸をよぎりました。
ヴォーカリストとして人前に立つということは、
すっぽんぽんでステージに出て行くのと同じ。
自分以上の人間に見せることも、
自分よりも小さい人間のふりをすることもできません。
どんなに「ふり」をしても、オーディエンスは一瞬で見破るのです。
だから、すっぽんぽんで、
「私はこんなだけど、なんか、もんくある?」と自分をさらけ出すことを恐れない。
ありのままの自分を受け入れ、
さらけ出すことこそ、自信となり、勇気となります。
どんな相手も、どんなことばも、真っ正面から受け止め、
全身全霊でぶつかっていく。
足りないことは潔く、足りないのだと認める。
その上で、
受け手にとってなにがベストかを、
自分に足りないことをどうやったら補完できるかを
一所懸命考える。
そうして、ときに激しく、
ときに優しく、
ときに厳しく、
ときに寄り添って、
伝える。
伝える。
伝える。
そうやって歌ってきたのだから、
そうやって語っていこう。
あれから17年。
いや、まもなく18年。
すっぽんぽんで、全身全霊で、
ぶつかっていくスタイルは、
ヴォーカリストとしても、
教える、語る人間としても、少しも変わりません。
そのスタイルをどう思われても、
私にはそういう風にしか歌えない。語れない。
よくわからないけれど、
たくさんの素敵な生徒に恵まれました。
MTL12、第3期がスタートしました。
ひとつでも、「わからない」「できない」と言うことを減らせるように、
日々精進を繰り返しつつ、
すっぽんぽんで、ぶつかっていきます。
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