大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

どんなに「ふり」をしても、オーディエンスは一瞬で見破るのです。

   

「わからないことを、わかっているかのように、
できないことを、できるかのように語らないこと。」

 

MTLのインストラクター養成コースのテキストの冒頭に、
こんなことばを書きました。

 

人にものを教える立場になるには、自信と勇気が必要です。

 

どんなに知識があっても、
どんなに技術があっても、
どんなに経験があっても、

100パーセントの回答を用意出来る人はいません。

知らないことを聞かれたらどうしよう、
自分の知識や技術の底を見透かされたらどうしよう、
「お前なんか」と、舐められたらどうしよう、

そんな想いが脳内をぐるぐると巡れば、
恐ろしくて、教える側に立つことはできません。

 

だからといって、
そんな想いを悟られないようにと、
大上段に構えて、高圧的な態度を取れば、
ただ恐れられ、嫌われるだけで、
自分にも相手にもいいことはなにもありません。

 

はじめて学校で教えることになって、
どんな距離感で生徒たちと接したらいいのか途方に暮れたとき、
ふと、

「歌うように語ればいいのだ」

という想いが胸をよぎりました。

 

ヴォーカリストとして人前に立つということは、
すっぽんぽんでステージに出て行くのと同じ。

自分以上の人間に見せることも、
自分よりも小さい人間のふりをすることもできません。

どんなに「ふり」をしても、オーディエンスは一瞬で見破るのです。
だから、すっぽんぽんで、
「私はこんなだけど、なんか、もんくある?」と自分をさらけ出すことを恐れない。

ありのままの自分を受け入れ、
さらけ出すことこそ、自信となり、勇気となります。

 

どんな相手も、どんなことばも、真っ正面から受け止め、
全身全霊でぶつかっていく。

足りないことは潔く、足りないのだと認める。

その上で、
受け手にとってなにがベストかを、
自分に足りないことをどうやったら補完できるかを
一所懸命考える。

 

そうして、ときに激しく、
ときに優しく、
ときに厳しく、
ときに寄り添って、

伝える。
伝える。
伝える。

 

 

そうやって歌ってきたのだから、
そうやって語っていこう。

あれから17年。
いや、まもなく18年。

すっぽんぽんで、全身全霊で、
ぶつかっていくスタイルは、
ヴォーカリストとしても、
教える、語る人間としても、少しも変わりません。

そのスタイルをどう思われても、
私にはそういう風にしか歌えない。語れない。
よくわからないけれど、
たくさんの素敵な生徒に恵まれました。

 

MTL12、第3期がスタートしました。

ひとつでも、「わからない」「できない」と言うことを減らせるように、
日々精進を繰り返しつつ、

すっぽんぽんで、ぶつかっていきます。

40165770 - very skinny headband wearing fighter shows skills

 

 - The プロフェッショナル, ヴォイストレーナーという仕事

  関連記事

ぶっ壊すことを恐れない。

CMの作詞のお仕事を依頼されたときのことです。 某大企業のCMの歌詞を書かせてい …

レッスンでは、トレーナーの「アーティスト性」は無用どころか、邪魔なんだ。

レッスンの折には、多かれ少なかれ、 生徒たちに、歌を歌って聞かせるシーンというの …

「数値」と向き合う。「ヒト」と向き合う。

◆歌の「うまさ」は数値化できる。 専門的な機械を使えば、いや、近年ではそこそこの …

他人の作品を「表現する」ということ。

ケン・ソゴルという名前を聞いて、 「おぉ、懐かしい」と思う人は、 どれくらいいる …

「目立ってなんぼ」はさっさと卒業する

テレビは基本洋画一辺倒で、時折ニュースをつけるくらいです。 ワイドショーもドラマ …

「才能の超回復」を繰り返して、人は成長するのである。

「超回復」ということばを聞いたことがあるでしょうか? 筋トレで傷ついた筋肉は、 …

集中力ってのは、訓練だ。

「売れてるプロほど、ますます上達する」と言われます。 そもそも売れ始める時点で、 …

「ライブの時、自分の声が全然聞こえないんですけど・・・」

「MISUMIさ〜ん。ライブの時、自分の声が全然聞こえなくて、 音痴だ、がなって …

「そんなこと、基本の「き」だろう!!?」

某ビール会社のCM制作のお仕事で、 ある著名なボーカリストが歌うイメージソングに …

ヴォイストレーナーという仕事

ヴォイストレーナーって仕事は、 本当に難しい仕事だと、日々感じています。 プロの …