「5才のこどもにもわかるように説明しろ!」
2017/02/06
学生時代、授業のためにと、
さまざまな本を購入するように言われました。
難しい名前のついたその本たちは、
その中身も、なんだか難しく書かれていて、さっぱり読む気がしない。
読んでもちっとも頭に入ってこない。
あ〜あ、専攻を間違えたか。
大学の教科書というのは、こんなにも難しいものか。
それとも、私の頭が悪いのか。。。
そんな風に悩みながらも、
結構なお値段のその本たちは、
もったいないことに、ほとんど数ページずつしか読んでもらえないまま、
ことごとく処分されていったのでした。
こうして、
「勉強とは、難解でつまらない本を一所懸命読むことである。」
という、ある種のトラウマを植え付けられ、
あぁ、人は、勉強が嫌いになっていくんであります。
しかし、です。
本好きだった私は、
その後、本の取り次ぎ店でバイトをするようになり、
大学で購入した本たちと同じようなテーマの、
もっともっとおもしろくて、わかりやすくて、
しかも、ずっとずっと内容の濃い本とたくさん出会うようになりました。
「難しいことを難しく話すのは誰にでもできる。
本当に頭のいい人とは、
難しいことを、誰にでもわかりやすく説明できる人のこと。」
そんなことばを聞いて、
妙に納得したものです。
“Explain Like I’m 5 years old!”(5才のこどもにもわかるように説明しろ!)
という、英語圏でよく使われるスラングがあります。
自分ではわかっているつもりことも、
実は、テクニカルなことばの羅列や、
ざっくりとしたイメージだけで、
なんとなくとらえていることが少なくありません。
どんなことも、本質的な理解ができていなければ、
「5才のこどもにわかるように」、
難解なことを説明することはできないのです。
人にものを教える立場となって、しみじみ考えること。
わかりやすい例えというのは、相手によって全く違う。
自分と全くバックボーンの違う相手と同じ目線に立って、
物事をわかるように説明するには、
柔軟な発想と想像力、そして忍耐力が不可欠で。
見る人、聞く人の集中力を途切れさせない、
人間的な魅力やコミュニケーションスキル、
エンターテイメント性を兼ね備えてこそ、
本当に人の心に届く講義ができる。
ただわかっている、話せる、というだけでは不十分。
ちゃんと届くには、「5才のこども」にも響くように、
興味を持ってもらわなくてはいけない。
結局は、受け手のやる気を問う前に、
やる気を引き出せない、自分のやる気を問うべきだ、と。
まだまだ修行が続きます。
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