絶対音感、いりますか?
つい先日、某テレビ局の方から不思議なお仕事の依頼があり、
お話を伺いました。
内容的に私向けのお仕事ではなかったので、
丁重にお断りしましたが、
その会話の中で、
いきなり、その方が、
「え?先生は絶対音感じゃないんですか?」
と驚いたような声で言うのです。
私のことをブログかHPで見つけたと言っていたので、
たぶん、私の経歴を見たのでしょう。
あたかも、
プロのヴォーカリストで、
ヴォイストレーナーまでやっている人は、
絶対音感なんか持っていて当然、
とでも思っているようでした。
いやいやいやいや。
ご存知ない方のために書いておくと、
「絶対音感」というのは、
聞こえた音の音名が認識できる特殊な能力のことで、
人口の3%程度いると言われています。
私自身、耳が悪い、
譜面が弱いと言われた若かりし頃は、
ずいぶん憧れた能力です。
ヴォーカリストにとって、
大切なのは相対音感である、と知ってから、
コンプレックスも憧れもすっかりなくなりましたが、
一体どんな世界だろうという興味は、相変わらずあり、
少し前にも、最相葉月著の絶対音感という本も読みました。
「絶対音感だ」という人にも、いろいろいます。
コップをコンコンと叩いて「これはB♭とAの間くらいだね」、
などという人もいれば、
ホテルの一室で、
楽器もなしにオーケストラのスコアを書いている、
という人もいました。
矢野顕子さんのように、
人の会話も、水の音も、
世の中のありとあらゆる音が音符で聞こえてくる、
という天才的なタイプもいれば、
「あ、これAですよね?」という音が、
たいがい半音くらいずれている人や、
バンドが転調して演奏していることに気づかず、
自分だけがひたすら譜面通りに歌う、
というツワモノもいました。
確かに、便利な能力であり、
絶対音感であることが圧倒的に有利に働く畑もあるようですが、
歌がめちゃくちゃすごくて憧れた人に
「絶対音感だ」という人はいませんでしたし、
日本の某有名サキソフォーンプレイヤーも、
著名なピアニストの方も、
「絶対音なんかない」と言っていたくらいですから、
本当の意味で「音楽的な才能がある」ということと、
「絶対音感がある」ということは、
全然別のことなのだなと、理解しています。
例えば、
足の甲が人一倍高いとか、
手足が見事に長いという人は、
確かに、バレエを踊れば有利でしょうが、
それイコール、
素晴らしいバレエダンサーになれる
ということでは全くない、ということと似ています。
一般の人にとって、
「絶対音感」のようなことばは、
「高い声が出る」「音大出」などということばと同じくらい、
わかりやすく、
音楽の才能を評価できることばなのでしょう。
スポーツのように勝敗がない、
学問のようにスコアもない。
音楽って「権威」をつけるのが、
実に難しいジャンルであります。
ま、ひとつ言ってしまえば、
「権威」なんかを頼りに物事をジャッジしているうちは、
わかってねぇな、
ってことなんですけどね。
精進。精進。

◆RadioTalkをはじめました。23時前後に配信をしています。
関連記事
-
-
上澄みをすくい取って「わかった気」にならない。~Singer’s Tips#21~
ちょっと昨日のブログの続編的なお話です。 ひとつの曲が生まれて、 受け手の手元に …
-
-
「譜面台を立てるか、立てないか問題」を考える。
「譜面台を立てるか、立てないか問題」は、 これまで、さまざまなところで 語ったり …
-
-
練習するのは、全てを忘れるため
「テクニックなんかどうでもいいんですよ、歌は。」 ピッチだ、リズムだ、表現力だと …
-
-
「レトリバー2頭分」?
「レトリバー2頭分、離れてお並びください。」 先日、小旅行の際に立ち寄った、 ペ …
-
-
年齢は、ただの数字。
先日、外国人の友人家族とスキー旅行に出かけた時のこと。 「ホテルに泊まるのに、な …
-
-
「フォームは乱れるもの」と心得る。~Singer’s Tips #1~
どんな名プレイヤーも、 長期間試合に出続けていると、 急に成績不振になったり、 …
-
-
「自分の本当の声」ってなんだ?
「私の本当の声ってどんな声なんでしょう?」 シンガーやパフォーマーに限らず、 一 …
-
-
「彼の演奏は完璧だ。だけど、彼の演奏はEmpty(空っぽ)なんだ。」
「この歌手は”お上手”過ぎて、面白くもなんともねーな。」 …
-
-
「私の歌って、どうですか?」
「自分の歌ってどうなんだろう?」 歌う人誰もが一番知りたいのってそこなんだなと、 …
-
-
本気でやりたいなら、「なんか」やれ。
アーティストやタレント、声優の、 新人育成を担当させていただく機会が多々あります …
