大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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“Be present.” (今、この瞬間を味わって)

   

昨夜、往年のセクスィー男優リチャード・ギア主演の、
『嘘はフィクサーのはじまり』という映画を見ました。
(原題:Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer/邦題のセンスのなさに失神しそう・・・)

実によくできた面白い映画だったので、
機会があったらぜひ見て欲しいのですが、

今日のポイントはリチャード・ギアの演技。

二枚目のイメージが強ければ強いほど、
どうやって年を重ねていくか、
どんな役どころを狙っていくかは、
俳優生命を左右する大きな問題になるでしょう。

いくつになっても二枚目を演じ続けられる、
ホンモノのスターもいれば、

そろそろモテる役とか、無理でしょ?
と突っ込みたくなる俳優もいる。

ルックスの衰えを逆手にとって、
性格俳優を通り越して、
怪優みたいになっちゃう人もいるし、

いつの間にか、コメディ専門の、
面白い俳優になっちゃっている人、

長いこと名前を見ないなぁと思っていたら、
いきなり中高年の役者としてカムバックする人・・・

本当にいろいろで、
カラダ資本の仕事、
人前に立つ仕事を続けることの難しさ、
諸行無常を感じずにはいられません。

しかしね。

昨夜の映画のリチャード・ギアは違いました。

「今」を受け入れ、
最大限に楽しんでいるんです。

「俺、リチャード・ギアだけど」っていう匂いをさせない。
がんばって新しいことをしようとしている感もない。
あーあ、劣化しちゃって・・・という悲壮感もない。

リチャード・ギアレベルの俳優さんで、
これができるって、すごいことだよなぁと、
感じ入りました。

誰にだって、
自分の人生に対するプライドはあります。

振り返れば、過去はどんな瞬間も輝いて見えるし、
絶え間なく変化して行く自分や、
日に日に、終わりに近づいていくキャリアに、
不安や恐れを感じない人はいないでしょう。

しかし、

今、この瞬間の自分以外の自分は、
どこにも存在していない、ただのゴーストです。

この瞬間を徹底的に味わう。
今の自分を最高に楽しむ。

そうやって、「今」の最高を生きるなら、
人生ってのは、どの時点でも、
「絶頂期」なんじゃないか。

毎朝やっている、
ヨガのYoutube”Yoga with Adrien”中で、
インストラクターのAdrienが繰り返し言います。

“Be present.”
(今、この瞬間を味わって)

今を受け入れる。
今を味わう。
今を楽しむ。

人として、
アーティストとして、
パフォーマーとして、
どんなときも大切にしたいことばです。

 

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