視点を変えれば、感動は無数に生まれる。
1990年代に一世風靡したロックバンド、
オアシスのノエル・ギャラガーが、
どんな曲からインスピレーションを得ているのかと聞かれて、
「オレがネタにしている曲なんて、そうたくさんはない。
同じ曲から、さまざまなインスピレーションを受け取って、それを形にしてるだけだ。
これからもその数曲から、何曲でも書ける。」
というようなことを言っていました。
(ずいぶん昔にどこかで聞いた話なので、出所は不明)
どれほどアクティブでおもしろい人生を生きていても、
とっておきのネタというのはそうはありません。
たとえば、小学校の時のエピソードや、高校時代のエピソードなどと言われて、
頭をぱっとよぎるのは、いつも限られた、
記憶の中に強烈に焼き付いているいくつかのシーンだけ。
多感な時代に、数千時間を過ごした場所なのに、
語りたくなるようなインパクトをもって、自分の中にとどまっているのは、
そこでの、ほんの10数シーン前後にすぎません。
同じように、10年、20年と活躍して、
数十曲というラブソングを書く人たちの誰もが、
それほどの数の、濃密な恋愛をしているわけではない。
ある、猛烈に心動かされたシーンを反芻して、
そのシーンを体験しているときの自分自身の感情をあらゆる角度から切り取り、
さまざまな表現で形にしていく。
また、そこにいあわせた、さまざまな人たちの視点を借りて、
別の方向から、感情や表情を切り取っていくこともあるかもしれません。
同じシーンから受け取る印象や情報、感情は、
人それぞれの視点、立場や性格、人生経験、固定概念のあり方などによって違うからです。
(黒澤明監督の『羅生門』のテーマが、まさにこれでした)
そうやって考えていけば、
ひとつのシーンから無数に作品が生み出せるということになります。
画家や彫刻家などのアーティストしかり、小説家しかり。
デザイナーや、書家、脚本家、
もしかしたらコックさんもそうかもしれない。
「ネタが切れた」と感じたら、
自分の感情を激しく動かしてくれた特別なシーンをもう一度反芻して、
角度を変えて、視点を変えて、向き合ってみることが大切なのですね。
関連記事
-
歌を歌って音楽の世界で活躍したい人に必要な3つの資質
歌を歌って、音楽の世界で活躍したいという人にとって、 必要な資質はなんでしょう? …
-
ショートカットでいこうっ!
15年以上前のことになりますか。 買ったばかりの音楽制作ソフト=Logicを勉強 …
-
歌がうまくなりたいなら、そろえるべきアプリ10選!
今日はヴォーカリストやトレーナー、歌がうまくなりたい人が持っていると便利なお勧め …
-
「他者基準」で自分をジャッジしない。
才能あふれる若者たちを教える機会に恵まれています。 レッスンのたびにワクワクした …
-
パフォーマーはいつだって、その美意識を試されているのだ
ヴォーカリストは、すっぽんぽんになって、 自分の内側外側をさらけ出すようなお仕事 …
-
歌詞カードを丸暗記するより大切なこと。
本番直前になると、こういうブログを書いていることを、心の底から後悔します。 &n …
-
「選ばれる基準」
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とは、 日本の最高額紙幣に印刷され …
-
「時間を忘れて夢中になる人」だけが、プロフェッショナルとなる
「ボクね、コーヒー飲もうと思って口に入れるでしょ。 で、そのまま機材の調整はじめ …
-
本当に大切なことは現場が教えてくれるんだ。
某映画のバンド演奏のシーンの撮影に立ち合ったことがあります。 役回りは、出演者の …
-
音楽を「職業」にしないという選択
若い頃から音楽を志して、寝る間も惜しんで練習や創作、 ライブ活動に打ち込んで来た …
- PREV
- 「上手そうに歌うな」
- NEXT
- 「圧倒的な安心感」をくれるプレイヤーの条件