楽しくやるから、いい仕事ができる。
ニューヨーク時代、日々の生活で最も気になったのは、
巷で働く人たちのやる気のない態度でした。
某有名スーパーでレジにタオルを数枚持っていった時のこと。
レジのおねえさんが値段を入力しはじめると、
その中の1本の値札が外れていることに気がつきました。
日本なら、店員さんが、
「申し訳ありません!少々お待ちください!」
と、レジの鍵を回して、タオル売り場に値段を確かめに走る場面です。
しかし、レジにどっかりと腰をかけた、その巨大な黒人のおねえさんは、
私をにらむように見て、こう言ったのです、
「これいくらだった?」
言い値かよ!?と心の中で突っ込みながら、
「わからない」と答えると、
彼女はこれ見よがしの大きなため息をついて、
どっこいしょと(そうは言わなかったけど)イスを立ち、
タオル売り場にのそのそと消えたのでした。
そんなに楽しくもない仕事を、なんでやってんの?
Grand Central Stationの長距離列車の窓口の男性しかり。
AT&Tという電話会社の受付の女性しかり。
Citi Bank銀行の行員しかり。
日本なら、一流企業の職員として、
そこそこのプライドと誠実さを持って応対する仕事であるはずなのに、
まぁ、そろいもそろって、感じの悪いことこの上ありませんでした。
それは、こちらが日本人だからとか、
英語がイマイチだからとか、そういうことではありません。
単純に、彼らは、仕事が楽しくないのです。
「仕事なんだから楽しくなくて、当たり前」という人が時々います。
しかしです。
こちらで何度も書いているように、
人間、楽しくないことは一所懸命できません。
どうせやるなら、それでお金をいただくなら、
どうしたら楽しくやれるか、工夫するのが当然です。
ミュージシャンもしかりです。
本当に売れているミュージシャンで、
楽しくなさそうに演奏する人、まわりに気を使わせる人には、
少なくとも私は会ったことがありません。
私自身が100本以上お仕事をさせていただいた、
CM界の巨匠と言われる作曲家・アレンジャーの某氏は、
1日に作曲しなくてはいけないプログラムが3本も4本も重なっているときも、
スタジオに24時間缶詰状態が何日も続いたときも、
いつでも、それはそれは楽しそうにお仕事をしていました。
もちろん、彼は音楽が大好きだから、ということもあるでしょう。
しかし、それこそが、
彼のスタッフさんやミュージシャンに対する感謝、思いやり、
そしてサービス精神なのではないか。
誰だって、同じ時間を過ごすなら、機嫌よく、楽しくやれる人と仕事したい。
「また会いたいと思われる人」が仕事に呼ばれるのです。
そして、集まった人たちが、楽しく、いい雰囲気で仕事をするからこそ、
仕事の精度が上がる、ライブでいい演奏ができる。
そして、いい作品がつくれるのです。
さて、あなたは、楽しくお仕事していますか?
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