大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「あの頃は不便だったのよ」自慢

   

兄弟や友人に音楽通がいる人ならともかく、
昭和の時代に、
たったひとりで音楽を学んだり、
音楽の情報を集めたりするのは、
なかなかに忍耐と根性のいる仕事でした。

 

ラジオを聞く→曲と出会う→アーティストの名前を知る
→雑誌を読む(もしくは立ち読みする)
→レコードを借りる、または買う

だったり、

雑誌を読む→アーティストと出会う
→レコードを借りる、または買う、

だったり。
そのすべてをマメにやっている人でもない限り、

 

アーティストの名前と顔と声とが一致するなんてことは、
実に不可能な時代でした。

 

だってね。

動いているビートルズやボブ・ディランなんか、
映画館でしか、ちゃんと見たことなかったわけです。

 

「え〜?そんなバンドも知らないの?」

「もっと音楽聴かなくちゃだめだよ〜」

 

 

そんなことを言われて、

一体何を聞けばいいのか、
一体どうやったらいい音楽に出会うのか、

途方に暮れて、

かといって、お金もなかったあの頃・・・。

 

図書館に通っては、片っ端からレコードを借りたり、

友達に電話をかけて、根掘り葉掘り訊ねたり、

それらしいラジオをチェックしたり、

雑誌を立ち読みしたり・・・

 

そんな風に、地道に、地道に、
1曲1曲と出会い、
お気に入りの歌手やバンドを発掘してきました。

 

気に入ったレコードは、
カセットテープに次々録音し、
歌詞カードのコピーを取り・・・

とはいえ、
気に入ったレコードに歌詞カードがついていたことは実に希。

 

とことん時間をかけて、
それらしい歌詞を聴き取ったりもしました。

 

歌詞カードやライナーノーツが入っていれば、
そこそこアーティストの情報も知ることができたでしょうが、
そんなことも希。

名前と、たいがいハッキリ写っていないジャケットの顔写真だけで、
この人たちはどんな人たちなんだろうと、
それはそれは想像力を膨らませたものです。

そんなアーティストの名前が、
突然ラジオで囁かれたときの興奮。

そんなアーティストの写真を、
雑誌で見つけたときの喜び・・・。

 

そうそう。

なんとかうそくそでも、聞き取って歌っていた曲の歌詞カードを、
どこかで見つけて、答え合わせできたときの、
超絶なやった感というのもあったっけ・・・

 

あぁ、楽譜なんかも、
あちこちの楽器屋さんを歩き回って探して、
見つからなくって、
あんまり自信のない自分の耳を頼りに、
なんとか楽譜的なものをつくったりしたんだっけ。

よくわかる人に、ぼろくそ言われたり、
これまた、どこかで楽譜と出会って狂喜乱舞したり・・・
(そんな間違いだらけの譜面で練習したの?
と後年、ジェフ夫さんとかに、これまたぼろくそ言われるわけですが)

 

よいしょと、腰掛けて、
ぽぽんのぽんで、情報を取り出し邦題、
という今の時代とは覚醒の感があります。
若者たちに、「想像できないでしょ?」と
自慢げにいうこともありますが、

自分たちだって、今さら、想像できません。

 

大変だったのは情報を集めることばかりではなくて、
発信するのも一苦労でした。

 

だってね。

口コミを広めるのは、
文字通り、「人の口」以外なかったわけです。

 

まぁ、そんなこと言い出したら、
デモはカセットテープだったし、
デモのラベルは、プリントゴッコでつくったし、

フライヤーは手書き+写真の切り貼りをコピーして、
友達や、以前のお客さんに郵便で送ったし、
楽器屋さんやスタジオに配りまくったし・・・

 

あぁ、アナログでしたなぁ。。。

 

あれ?

今日はね。ホントは、

お手軽にどんな情報でも収集したり、
発信したりできるようになった若者たちの方が、
実は忙しくて。。。みたいなお話を書こうと思ったのに、

なんか、昭和ミュージシャンの回顧録みたいになっちゃった。

 

・・・たまには、いいでしょうか。
こんな、な〜んのためにもならないブログ(^^)

 - Life

  関連記事

自分の名前をGoogleで検索する?

今日は著者なかま&朋友、デザイナーのウジトモコさんの新刊『SNS xDESIGN …

「あのね、わかる人と変わってください!」

先日、某携帯電話のS社に問い合わせの電話をかけました。 新規にiPadのセルラー …

「夢喰って生きられないぞ」

大学3年だったか、それとも4年生だったか。 アルバイトをしていた東京タワーのおみ …

15分間の名声(15 minutes of fame)

「誰もが知っている有名人」は、 自分が有名であるという認識こそ、もちろんあるけれ …

言わなくていいこと。言うべきこと。

言わなくてもいいことを、 「これはあなたのためだから」と、 上から言う人がいます …

声の温度。歌の肌触り。音の匂い。

ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …

「歌うのが嫌い」という人の本当のわけ

「音楽に興味がない」「興味が持てない」という人は、ときどきいますが、 「音楽が嫌 …

このレースに勝ちたいか。 そもそもレースに出たいのか。

以前、 「最近の運動会では徒競走の順位がわからないようにしていて、 昔のように着 …

他の誰かにとっては、 「なんぼのもんじゃい」の人生かもしれない

またひとつ、自分にとっての大きな挑戦が終わり、 静かな気持ちで休日を過ごしていま …

優秀な人は群れない。媚びない。焦らない。

今日は朝から、頭脳派かつ純粋にそれぞれの仕事を追求するリアルプロフェッショナルの …