「お客さんに甘やかされたらあかんよ」
「MISUMIちゃん、
こういうお客さんに甘やかされたらあかんよ」
京都でバンドをやっていた頃のことです。
私以外のメンバーは京都や大阪出身の、いわば関西人。
毎月3〜4本、京都を拠点に、
近畿、中四国などのライブハウスを回っていました。
関西独特の雰囲気の中で、
これまた関西人のお家芸である、
R&Bやソウルミュージックを歌い倒す。
実にスリリングで楽しい日々でした。
拠点とする京都のライブハウスで演奏したときのこと。
お客さんは、すでに何度もLiveに足を運んでくれている、
いわばおなじみさん。
そして、関西の方はとにかく温かい。
出て行った瞬間に、わぁ〜っと会場が盛り上がるわけです。
いつもの曲を演奏し出すと、
いつものように盛り上がり、共に歌い、
最後はスタンディングになって大盛り上がりになる。
MCをしても、コール&レスポンスをしても、
何をやっても確実に盛り上がるライブ。
「あー、やっぱり京都、最高!」
楽屋に戻って、ため息をついた私に
メンバーがぽつりと言ったのが、冒頭のことばです。
「あったかいお客さん」は、最初から盛り上がりに来ている。
だから、こちらの演奏がどうでも、
彼らは必ず盛り上がってくれる。
必ず盛り上がってくれる前提があるから、
プレイが甘くなったり、選曲が守りに入ったりする。
つまり、予定調和を求めて、
「いつものあれ」を繰り返すようになるわけです。
「ミュージシャンを生かすも殺すも、
お客さんなんですよ。」
お客さんとの関係性、距離感は、
どんなアーティスト、ミュージシャンにとっても、
大きな課題のひとつでしょう。
「いつものあれ」を求めて来るお客さんを裏切るのも違う。
とはいえ、
毎回、おんなじようなことばかりやっていたのでは、
お客さんの心はやがて離れてしまう。
うまくいったライブの再現を繰り返せば、
自分自身の劣化コピーのような演奏にもなる。
そのポイントで満足すれば、
そこから先へは、けしていかれません。
ライブで「ウケる」ことが大切なのは、
どんなパフォーマーにとってもおなじです。
しかし、一度ウケると、
自分の成功パターンのようなものを
無意識で組み立ててしまう。
この成功パターンがくせものです。
一度パターンにはまり込んでしまうと、
安心領域を出られなくなるのです。
誰とやるときも、
どこでやるときも、
毎回、おなじような楽譜を抱えて、
成功パターンを再現しようとしてしまう。
そうして、
自分自身がパワーダウンしていくことに気づけないまま、
ライブを繰り返してしまうことも多々あります。
挑戦と成功の積み重ねこそが、
自分自身の演奏の鮮度を保ち、
オーディエンスとのいい関係性を保つではないか。
ともすれば予定調和を求めてしまうとき、
思い出す、大切なことばです。
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