「アイデンティティ」と向き合う 〜from USA①〜
週明けから10日ほどの予定でニューヨークに来ています。
ニューヨークは1992年から約2年間の海外生活のうちのほぼ半分を過ごした街です。
思えば、たったの1年。
「住んでいた」と言えるような期間ではありません。
どちらかというと長めの旅行くらいの時間だったわけですが、
私にとっては人生の分岐点とも言えるべき、大きな意味をもった時間でした。
これから数日間。旅先でのブログは、そんな心の旅をシェアしたいと思います。
海外に出ること。知らない土地で一人で暮らすこと。
・・・新しい世界を知ることは、自分自身と出会うことでもあります。
自分が何者であるか。
「アイデンティティ」という言葉の真の意味と、とことん向き合わざるをえなくなる。
生まれたときから、
日本というシステムに守られ、
家族や社会に守られ、文化に守られ、
それらを当たり前と思って来た自分自身が、
なんのステータスもなく、誰にも興味を持たれず、
言葉さえもろくにしゃべれない、ちっぽけな存在となったとき。
その恐ろしさと孤独を感じることで、逆説的ではあるけれど、
はじめて自分自身の存在意義を知ることになる。
そんな風に考えています。
私の場合は、英語学校に通いつつ、
オーディションを受けたり、ライブをしたりして、
自分自身の可能性を探っていたので、
会社の仕事や、留学目的で渡米する人たちとは、
ひと味もふた味も違う、なんともロックな生活でした。
一日でも長くニューヨークで暮らし、
音楽のコネクションを築き、認められたいという思いでいっぱいで、
まぁ、いっぱいすぎて、今では笑い話になるくらい、
というか、漫画になるくらい、
とんでもない経験を山ほどすることになります。
・・・そんな話はまた追々(^^)
アイデンティティ。
「自分探し」が流行の昨今では普通に使われることばになりましたが、
海外に来ると、その本当の意味を痛感するようになります。
自分が何者であるかを証明してくれるのが、
パスポートやビザなどの、単なる紙切れだけ。
家族や友人もひとりもいない。
言葉もろくに話せない状態では、
話し言葉に垣間見えるはずの、自分のバックボーンを察してもらうこともできません。
日本人同士で話していれば、
知性や育ちなど、なんとなくわかるものですが、
外国語で幼稚な言葉遣いしかできなければ、そんなことの伝えようもありません。
「ボーカリストだ」「ミュージシャンだ」などと言っても、
そんな言葉を聞き飽きたニューヨーカーたちは、しらっとした顔で
“How good are you?”(うまいの?)と聞き返すのみ。
「プロミュージシャン」などという、あってないような肩書きは、
よその国の人たちには、なんの説得力もありません。
立場が逆だったら?
たとえば、海外の小さな国から日本にやってきた若者が、
片言の日本語で、「プロのミュージシャンなんだ」と言ったとしても、
おそらく、それ自体に感動したり、尊敬の念を抱いたりすることはないのではないか?
そんな風に考えれば、彼らの反応は至ってフェアです。
日本では「プロ」ということで、
少なからずきちんとした扱いをしてもらうことに慣れていた私にとって、
そう気づいたときの寂しさはひとしおでした。
パスポート。ビザ。
家族。友人。自分の話す言語。
属している社会。文化圏。
そんなひとつひとつに、また、重みと感謝を感じる時間です。
・・・というわけで、せっかく旅の途中だから、ちょっと脳天気な写真もアップします(^^)
自由の女神のあるステイタンアイランドからのマンハッタン。
記録的な暑さで、真夏の国に戻ってきたようです。
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