大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

上澄みをすくい取って「わかった気」にならない。~Singer’s Tips#21~

   

ちょっと昨日のブログの続編的なお話です。

ひとつの曲が生まれて、
受け手の手元に届くまで、
どのくらいの工程と時間がかかるか。
考えてみたことはありますか?

曲が生まれるスピードは、
人によっても、時と場合よっても、千差万別。

数十分でメロも歌詞も書けてしまう人もいれば、
何時間も、何週間も、かかる人もいる。
作曲家から、作詞家へバトンが渡される時もある。

こうして生み出されたたくさんの曲の中から、
コンペや会議をかいくぐった曲だけが、
制作の現場にまわるのです。

シンガーソングライターの場合も例外ではなく、
100曲もあるストックの中から、
ふるいにかけられた曲だけが、日の目を見る。
それでも、何度も手直しさせられることはザラです。

曲が決まってからが、本格的な制作作業です。

アレンジャーがアレンジをするのに、10時間〜数十時間。

そのオケに乗るように、
どんなスタイルで歌うか、
どう歌えばカッコよく聞こえるかと、
歌手たちが模索し練習する数時間があって。

レコーディングスタジオで、
演奏をレコーディングするのに、数時間。
歌を録音するのに、また数時間。
ミックスダウンとマスタリングに数時間。

曲が完パケして、お店に並ぶまで、
ビジュアル系、デザイン系の作業があり、
プレスがあり、流通に乗せる過程があり、
広告宣伝があり・・・。

ひとつの曲が、受け手の耳に届くまでには、
プロフェッショナルたちの、
何十時間分もの愛と叡智とエネルギーが詰まっているわけです。

かけられた時間とエネルギーが、
人を感動させるのです。

ちょちょっと曲を聴いて、
「あ、ここ、こんな感じで歌えばいいのね」と、
上澄みだけすくい取るような練習をして、
わかった気になる。

送り手でありたいなら、
これでは全然ダメなんです。

本当の価値は、
自分が聞こえている、
見えていると思っている音の、
裏側、奥深いところに存在している。

そんなことに思いを馳せて、
1曲1曲、向かい合っていきたいものです。

“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 開講します!
業界トップクラスのメソッドで、圧倒的な結果を出す。ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。

 - B面Blog, Singer's Tips, The プロフェッショナル, 夢を叶える, 音楽, 音楽人キャリア・サバイバル

  関連記事

「好きなことやれよ」

「好きなことやれよ。 好きなことのない人生なんて、つまんねーぞ。」 私の人生にも …

未来の自分を信じる~Singer’s Tips#29~

自分がオーディエンスだったら、 どんなシンガーを見たいか? どんな歌を聴きたいか …

肉体は変化する

ずいぶん前のことになります。 クラプトンのコンサートのチケットがあるからと、 友 …

ライブって、本当にすごいんだ。

人にライブの思い出を語るときは、 ついつい、大きなホールで歌った話や、 テレビの …

歌には”仕掛け”と”意図”がある!

昨今、カラオケのおかげか、 はたまたYouTubeやアプリのおかげか、 巷に歌の …

『「頭の中が真っ白になる時」チェックリスト』

人前に立ってパフォーマンスをしたり、話をしたりする人で、 「頭の中真っ白現象」を …

カッコよければなんだっていいじゃん。

歌を指導する立場にいながら、 口が酸っぱくなるほど言い続けていること。 「カッコ …

期待される人であれ。

ニューヨーク時代のこと。週1回、ジャズダンススタジオでレッスンを受けていました。 …

「うまい」ってのは、ほめ言葉じゃない。

「うまいね」って言われたら、まだまだだと思え。 常日頃、人に、自分に言いきかせて …

「こんな曲やるくらいなら、あたし、バンド辞める」

カバー曲ばかりやっていた学生時代、 すでに社会人バンドでがんばっていた高校時代の …